健康的な食事・運動習慣は人を幸せにする――川崎医大

健康的な食事・運動習慣を実践している人は幸福感が高いという調査結果が報告された。川崎医科大学健康管理学教室の高尾俊弘氏らが、特定健診受診者を対象に幸福感の調査を実施して明らかになったもので、研究の詳細は「Bio Psycho Social Medicine」に4月1日掲載された。
食事・運動習慣が、身体的健康の予後と強く相関していることはよく知られている。しかし幸福感との関連についての研究は世界的にも少ない。特に日本国内の非高齢一般住民における、それらの生活習慣と幸福感の関係はほとんど分かっていない。高尾氏らの研究は、この点を明らかにする目的で行われた。

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研究の対象は、2017年に同大学附属病院で健診を受診した人から、結果に影響を及ぼし得る因子(脳・心血管疾患、慢性腎臓病の既往、高血圧・糖尿病・脂質異常症の薬物療法)が該当する人を除外した2,295人(平均年齢49.3±8.4歳、女性が54.3%)。
幸福感は世界保健機関による指標(WHO-5)で評価した。これは主観的な幸福感を25点満点でスコア化するもの。本研究では第3四分位数である16点以上を「幸福感が高い」と判定した。食事・運動習慣については、特定健診の問診データを解析に用いた。
年齢、性別、BMI、睡眠の質の影響を統計学的に調整した結果、食事・運動習慣と幸福感との間に、次のような有意な関連が認められた。
まず、食習慣については、昼食の時間が20分超の人は10分未満の人に比較し、「幸福感が高い」に該当する割合が高かった〔オッズ比(OR)1.47(95%信頼区間1.03~2.11)〕。以下同様に、塩辛い物を好む人に比較し好まない人はOR2.10 (同1.35~3.25)、夕食を就寝2時間前以降に取る人に比べてそれ以前に取る人はOR1.32(同1.04~1.67)、夕食後の間食が週3回以上の人に比べて3回未満の人はOR1.27(同1.01~1.60)だった。食事を食べる速さや朝食欠食、野菜の摂取頻度は有意な関連がなかった。
次に、運動習慣については、30分以上の集中的な運動を週に2回以上する人はしない人に比べてOR1.58(同1.24~2.01)、1日の歩行時間が1時間以上の人は1時間未満の人に比べてOR1.29(同1.06~1.58)だった。その他の検討項目である喫煙や飲酒習慣は、「幸福感が高い」に該当する割合との間に有意な関連がなかった。
また、2016年の特定健診受診時にもWHO-5が評価されていた人については、2年間の食事・運動習慣の変化が幸福感に及ぼす影響も検討された。その結果、30分以上の集中的な運動を週に2回以上2年間継続していた人は、2年間行っていなかった人に比べてOR1.71(同1.24~2.36)、1日1時間以上の歩行を2年間継続していた人は、2年間行っていなかった人に比べてOR1.46(同1.12~1.91)と、「幸福感が高い」に該当する割合が有意に高かった。
なお、食習慣に関しては、調整因子から睡眠の質を除外し、年齢、性別、BMIで調整した場合、夕食を就寝2時間前に‘取る’から‘取らない’に改善した人は、「幸福感が高い」に該当する割合が有意に高かった。また、2年間ともに就寝2時間前以降に夕食を取らなかった人や、2年間ともに夕食後の間食を週3回以上取らなかった人も、「幸福感が高い」に該当する割合が有意に高かった。
これらの結果を著者らは、「日本人の非高齢一般住民において、良好な食事および運動習慣の実践が幸福感と関連している実態が明らかになった。特に身体活動に関しては、良好な習慣を継続することが、高い幸福感の維持につながる可能性が示された」とまとめている。

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