女性の隠れ肥満は過活動膀胱のリスクの可能性――長崎大

内臓脂肪が過剰に蓄積している女性は、過活動膀胱の有病率が高く、また内臓脂肪量と過活動膀胱の重症度に相関があることが報告された。一方で、皮下脂肪量やBMI、腹囲長などの肥満関連指標は、過活動膀胱との関連が有意でないという。長崎大学大学院医歯薬学総合研究科泌尿器科の宮田康好氏、松尾朋博氏らの研究グループの研究によるもので、詳細は「International Journal of Urology」に12月29日掲載された。
過活動膀胱は頻尿や尿意切迫感の主要原因の一つ。国内の患者数は810万人と推計されていて、珍しい病気ではない。これまでに、肥満やメタボリックシンドロームが過活動膀胱のリスクであることが示唆されているが、詳細は明らかになっていない。そこで宮田氏らは、腹部CT検査で評価した内臓脂肪・皮下脂肪の面積や量と、過活動膀胱の有病率・重症度、超音波検査での残尿量などとの関連を詳細に検討した。

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検討対象は長崎大学病院にて腹部CTスクリーニング検査を受けた女性182人。残尿量が100mL以上、尿閉、腎・泌尿器科疾患、排尿に影響する薬剤を服用中、などに該当する人は除外した。
過活動膀胱症状スコア(OABSS)により、71人(39.0%)が過活動膀胱と判定された。過活動膀胱群は対照群に比較して高齢で(65.5±12.6対52.7±14.8歳)、生活習慣病(高血圧、脂質異常症、腎機能障害)の有病率が有意に高かった。BMI(23.1±5.3対21.9±3.1、P=0.071)や糖尿病有病率(11.3対3.6%、P=0.064)は、過活動膀胱群の方が高いものの群間差は有意でなかった。
OABSSの合計スコア、およびサブスケール(昼間頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁の症状)の各スコアは、すべて過活動膀胱群の方が有意に高かった。また客観的指標である1回排尿量と最大尿流量は、過活動膀胱群が有意に低値だった。
肥満関連指標との関連では、内臓脂肪の面積・量、および、総腹部脂肪に占める内臓脂肪の割合が、過活動膀胱群の方が有意に高かった。その一方で、前述のようにBMIは同等であり、皮下脂肪の面積・量、腹囲長などの群間差も有意でなかった。
過活動膀胱の有病率との関連が認められた前記の指標と、OABSSスコアとの関連を検討すると、総腹部脂肪に占める内臓脂肪の割合との相関が最も強かった(r=0.394、P<0.001)。また総腹部脂肪に占める内臓脂肪の割合は、最大尿流量と有意な負の相関を示した(r=-0.289、P<0.001)。ROC解析により、総腹部脂肪に占める内臓脂肪の割合による過活動膀胱の予測能は、AUC0.742と計算された(P<0.001)。
単変量解析で過活動膀胱との関連が有意だった因子を独立変数とする多変量解析の結果、年齢〔オッズ比(OR)1.07、95%信頼区間1.09~1.10〕、メタボリックシンドローム関連疾患(高血圧、糖尿病、脂質異常症および腎機能障害。OR4.25、同2.26~8.02)、腹部脂肪に占める内臓脂肪の割合(OR7.04、同3.34~12.5)が、過活動膀胱の独立したリスク因子であることが分かった。BMIや腹囲長は単変量解析でも有意な因子でなかった。
これらの結果を基に研究グループでは、「過活動膀胱症状のある女性は内臓脂肪量が多いこと、内臓脂肪量と過活動膀胱の重症度が相関することが明らかになった」と結論付けている。なお、両者の関連のメカニズムについては、「内臓脂肪過剰蓄積によるインスリン抵抗性が、交感神経の亢進や慢性的な虚血状態を惹起し、下部尿路機能を低下させるのではないか」との考察を加えている。
BMIと過活動膀胱との関連が認められなかったことについては、日本人ではBMI低値でも内臓脂肪が過剰に蓄積している、いわゆる「隠れ肥満」が多いことの影響を指摘。また論文筆頭著者の大坪亜紗斗氏は、「今後は、過活動膀胱と隠れ肥満、および本研究で検討されていない男性の肥満との関連の研究が望まれる」と述べている。

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