尿酸値の高さはメタボと関連するが、糖尿病では別――兵庫医大

尿酸値が高い人ほどメタボリックシンドロームに該当する確率が高いが、糖尿病を併発している場合、その関連は見られないことがわかった。兵庫医科大学環境予防医学講座の若林一郎氏が「Diabetology & Metabolic Syndrome」3月10日オンライン版に発表した。

 糖尿病患者の尿酸値は一般集団に比べて低いとの報告が多い。その一方で、耐糖能異常(糖尿病予備群)では尿酸値とHbA1cが正相関するという矛盾する報告も見られる。そこで若林氏は、糖尿病患者も含まれる健診結果の大規模データを用いて、尿酸値と血糖レベルおよびメタボの関連を検討した。

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 解析対象は、29~70歳の日本人男性1万2,528人。年齢は47.1±9.4歳、BMI23.5±3.3で、糖尿病患者が6.4%、メタボ該当者が11.0%含まれていた。尿酸値で四分位に分けると、第1四分位群から順に0.3~5.1mg/dL、5.2~5.9mg/dL、6.0~6.7mg/dL、6.8~12.9mg/dLとなった。

 年齢、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧・脂質異常症・糖尿病治療歴で調整後のHbA1cの平均値は、第1四分位群から順に5.52%、5.44%、5.42%、5.41%となり、尿酸値が高いほどHbA1cが低く、第2~4四分位群は第1四分位群との差が有意だった(いずれもP<0.01)。

 一方、メタボ該当者の割合は、尿酸値第1四分位群から順に8.4%、8.9%、10.7%、16.1%であり、第3~4四分位群は第1四分位群に比し有意に高く(P<0.01)、HbA1cとは逆に尿酸値が高い群でその頻度が高率だった。第1四分位群を基準とするオッズ比(OR)で比較すると、第2四分位群から順に1.16、1.51、2.37となった(第3~4四分位群はP<0.01)。

 ところが、解析対象を糖尿病患者に絞って検討すると、尿酸値とメタボの関連は認められなかった。具体的には、尿酸値の第1四分位群(0.8~4.7mg/dL)のメタボ該当者の割合は50.5%、第2四分位群(4.8~5.5mg/dL)は56.9%、第3四分位群(5.6~6.4mg/dL)は53.6%、第4四分位群(6.5~12.9mg/dL)は60.2%であり有意な群間差はなかった。

 なお、糖尿病患者群における尿酸値とHbA1cの関係は、第1四分位群から順に7.90%、7.39%、7.25%、7.04%であり、全例解析と同様に尿酸値が高いほどHbA1cが低く、第2~4四分位群は第1四分位群との差が有意だった(いずれもP<0.01)。尿酸値とHbA1cの相関は、多因子調整後の全例解析で偏回帰係数-0.092(P<0.001)、糖尿病患者群で同-0.249(P<0.001)となり、糖尿病群でより強い負の相関が見られた。

 他方、血糖以外のメタボ構成因子である、血圧、中性脂肪、HDL-Cは、全例解析および糖尿病群での解析のいずれでも、尿酸値が高いほど悪化傾向を示すという正の関連があった。

 尿酸値と血糖レベルの関連が他のメタボ構成因子と異なる理由について若林氏は、血糖上昇に伴う尿量増加による尿酸排泄増加という機序のほか、糖尿病予備群においては、高インスリン血症に伴い尿細管での尿酸再吸収がインスリン作用により増加すること、また、尿酸値が低い場合では酸化ストレスが亢進し耐糖能が低下する可能性などを考察している。

 同氏は本研究の限界として、女性での検討を行っていない点や尿酸クリアランスに影響を及ぼすインスリン値を評価していない点などを挙げた上で、「血糖レベルは一般集団と糖尿病患者群の双方で尿酸値と逆相関する。血糖レベルを除く全てのメタボ構成因子は尿酸値と正の関連がある(HDL-Cは低値になる)が、糖尿病がある場合は尿酸値とメタボの関連が認められない」と結論をまとめている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2020年4月6日
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