ホルモン検査で不妊が分かる?検査の方法や結果の見方について


はじめに
妊娠を望んで性交をするときには、精子と卵子が出会うためのタイミングを意識する必要があります。
女性は月経の約2週間後から排卵が始まり、女性ホルモンが分泌し、基礎体温が上がり始めます。その後に子宮内膜が妊娠準備に入りますが(黄体期)、妊娠が成立しなければ子宮内膜が剥がれ落ちて月経となります。
妊娠するためには排卵日前後の性行為が望ましいので、この月経周期を知ることが重要です。
しかし、この周期を意識しても妊娠が1年以上起こらない場合には不妊症の可能性も考えられます。
女性側の不妊の原因の1つに女性ホルモンの分泌異常があります。月経周期における女性ホルモンの分泌量の変化を知っておくことは妊娠計画の作成や必要な不妊治療に踏み切るために大切なことです。
今回は、女性ホルモンが正常かどうかを調べることができるホルモン検査の種類と特徴、女性ホルモンと不妊の関係についてご紹介します。
ホルモン検査とは?
月経周期は、月経初日を1日目と数えます。
1~14日目までは卵胞が成長する卵胞期と呼びます。
月経から約2週間目に卵胞が十分に成長して排卵が起こり基礎体温が上がり始めます。
その後、2週間ほどは基礎体温が上がり子宮内膜が着床の準備をする黄体期と呼びます。
女性の体が妊娠の準備をするためには体内で分泌されるホルモンの働きが重要です。
それぞれの段階で適切にホルモンが分泌されているかは、病院で採取した血液を検査することで分かります。ホルモンは卵胞期と黄体期で変化するので、時期ごとに2回の採血が必要です。
ホルモンの種類と特徴
検査する主要なホルモンは卵胞ホルモン、黄体ホルモン、卵巣刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、プロラクチンなどの女性らしい体をつくり、機能を維持する女性ホルモンと総称されるものです。
各ホルモンの特徴を下にまとめています。
卵胞ホルモン(エストロゲン)
卵胞や黄体から分泌され子宮の発育や子宮内膜の増殖、乳腺の発達に働きます。黄体中期には増加します。
黄体ホルモン(プロゲステロン)
卵胞から変化した黄体から分泌され子宮内膜の肥厚、着床の準備、妊娠の維持に作用します。
卵巣刺激ホルモン(FSH)
下垂体から分泌され卵巣に働きかけ卵胞を大きくします。
黄体形成ホルモン(LH)
下垂体から分泌され卵巣に働きかけ排卵を起こします。排卵直後に大量に分泌されます。
プロラクチン
甲状腺から分泌されて乳汁分泌作用があります。妊娠末期から分泌が盛んになります。
アンチミュラー管ホルモン(AMH)
発育過程の卵胞から分泌されるため、妊娠出産の重要な指標である卵巣の予備能を予測する指標です。

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女性ホルモンと不妊の関係
月経が規則的な女性は月経の2週間前に排卵が起こります。
排卵と共に女性ホルモンの分泌が変化し、子宮内膜が妊娠に向かって変化します。
脳の視床下部から分泌された性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)が下垂体に働きかけ卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)の分泌を促します。
これらのホルモンは卵巣を刺激して卵胞ホルモン(エストロゲン)や黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌させる事で子宮に妊娠の準備をさせます。
妊娠が成立しなければ子宮内膜が剥がれ落ちて月経を迎えます。
これらの過程で、女性ホルモンの分泌に異常があると、子宮が妊娠の準備を出来なくなり、不妊症となります。
ホルモン異常以外の不妊の原因としては子宮内の卵子の通り道が詰まっていることや子宮の形態異常、女性側に精子に対する免疫反応があり精子を除去してしまうことなどがあります。

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ホルモン検査の結果の見方
月経周期における月経期、卵胞期、排卵期、黄体期の変化は、女性ホルモンの分泌量変化によるものです。そのため、ホルモン検査で適切な時期に基準範囲内のホルモン量がない場合は、女性ホルモンの分泌異常が不妊症の原因と考えられます。
各ホルモンの基準値の範囲を以下にまとめます。
(各病院で使用する検査試薬によって数値は変動します。担当医に確かめてください)
エストロゲン/CLIA法
卵胞期;11~239pg/mL、排卵期;120~390pg/mL、黄体期;9~230pg/mL
プロゲステロン
卵胞期;0.1~1.5ng/mL、排卵期;2.5~28.0ng/mL、黄体期;5.7~28.0ng/mL
黄体形成ホルモン(LH)/CLIA法
卵胞期;2.3~16.9mIU/mL、排卵期;2.9~51.3mIU/mL、黄体期;0.9~19.4mIU/mL
卵巣刺激ホルモン(FSH)/CLIA法
卵胞期;3.0~14.7mIU/mL、排卵期;3.2~16.6mIU/mL、黄体期;1.5~8.5mIU/mL
プロラクチン
検査法で異なります。EIA法では2.7~28.8ng/mL、IRAM法では1.4~14.6ng/mL、CLIA法では4.3~32.4ng/mLが正常値です。

無排卵性月経
無排卵性月経はエストロゲンの分泌異常によって起こります。
卵胞が成熟してエストロゲンの分泌はされますが、中枢性あるいは性腺の障害で排卵が起こらないため、卵胞は小さくなり、機能が衰え、急激にエストロゲンが減少します。
子宮内膜が増殖している場合はプロゲステロン投与、子宮内膜が増殖していない場合はエストロゲン・プロゲステロン配合剤投与などのホルモン治療を行います。
高プロラクチン血症
基準値より高いプロラクチン値の場合は卵巣機能異常による月経異常の可能性があります。
通常は明らかな月経周期の異常や乳汁の漏れなどで気が付きますが無症状あるいは症状に気が付いていない場合もあります。
排卵や着床がしにくい状態なので、妊娠が難しくなります。
甲状腺異常や卵巣と子宮肥厚の検査、女性ホルモンを投与しての月経異常の程度を確認後に治療を行います。
多のう胞性卵巣症候群
黄体形成ホルモン(LH)が高値で卵巣刺激ホルモン(FSH) の値の異常の場合に疑われます。
多のう胞性卵巣症候群では正常な排卵が行われないため、妊娠が難しくなります。
肥満やメタボリックシンドロームによるインスリン抵抗性が関与していることもいわれておりダイエット療法や薬物療法で対処します。
早発卵巣不全
40歳未満で3~6カ月の無月経期間があり高いゴナドトロピン値、低いエストロゲン値を満たす場合に疑われます。

慢性的なエストロゲン欠乏症による他の症状も出ている可能性があるので治療としてはエストロゲンやプロゲステロンのホルモン補充療法を行います。
加齢によって精子や卵子の数が減り妊娠のチャンスも少なくなります。
望んでいるにもかかわらず妊娠しない場合は、適切な時期に採血をして、ホルモンの値が正常かどうかを検査しましょう。
まとめ
不妊で悩んでいる場合のホルモン検査の必要性を理解していただけたでしょうか?
女性ホルモンの乱れは様々な不妊の原因となります。
医療機関で適切な検査を受け、自分の女性ホルモンの状態を把握しましょう!

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