CKDの原疾患によって高尿酸血症の転帰への影響が異なる――艮陵CKD研究

原発性腎疾患や高血圧性腎症による慢性腎臓病(CKD)では、高尿酸血症の併存が心血管疾患(CVD)イベントや全死亡のリスクとなることが明らかになった。一方、その他の原因によるCKDの場合、高尿酸血症の併存はCVDイベントや全死亡リスクおよび腎転帰との関連が認められないという。聖路加国際病院腎センターの渡邉公雄氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に3月25日掲載された。
CKD患者の高尿酸血症が、腎機能低下やCVDイベントのリスク因子である可能性が古くから指摘されている。しかし研究の結果には一貫性が見られない。渡邉氏らは、研究結果が一致しない理由は、研究対象のCKDの原疾患が異なるためではないかと考え、尿酸値と腎関連エンドポイント〔末期腎不全(ESRD)への進行〕および非腎関連エンドポイント(CVDイベントと全死亡)との関連を、原疾患別に検討した。

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研究の対象は、東北大学病院とその関連施設11施設の腎臓病専門医による多施設共同研究「艮陵CKD研究」の参加者のうち、尿酸値の記録がない患者などを除外した2,797人。平均年齢は60.5±16.2歳で、男性が54.4%を占め、eGFR53.3±29.7mL/分/1.73m2、尿酸値6.4±1.7mg/dLであり、24.7%に尿酸低下薬(アロプリノール)が処方されていた。
CKDの原疾患は、原発性腎疾患が46.7%、高血圧性腎症が16.7%、糖尿病性腎症が9.8%、その他が26.8%。ベースライン時において、高血圧性腎症群は他群より高齢でeGFRが低く、糖尿病性腎症群は尿酸値が高かった。また、尿酸値は原疾患にかかわらず女性より男性の方が高値であり、かつCKDの病期が進行しているほど高値だった。
平均4.8年の追跡期間中に12.8%がESRDに進行した。Cox比例ハザードモデルにて、腎機能低下に影響し得る因子〔年齢、性別、BMI、喫煙、尿蛋白、収縮期血圧、心疾患の既往、処方薬(RAS阻害薬、利尿薬、スタチン、抗血小板薬)など〕を調整後、原疾患にかかわらず尿酸値とESRD発症リスクとの間に有意な関連は見られなかった。サブグループ解析では男性でのみ、尿酸値とESRD発症リスクとの間に有意な関連が認められた〔尿酸値が1mg/dL高いごとのハザード比(HR)1.101(95%信頼区間1.009~1.202)〕。
追跡期間中の非腎関連エンドポイントは9.3%に発生した。前記の因子で調整後、原疾患が原発性腎疾患または高血圧性腎症の場合、尿酸値とエンドポイント発生率との間に有意な関連が認められた〔尿酸値が1mg/dL高いごとに、原発性腎疾患ではHR1.248(同1.003~1.553)、高血圧性腎症ではHR1.250(同1.035~1.510)〕。
なお、ROC解析の結果、原発性腎疾患患者の非腎関連エンドポイントを予測する尿酸値の最適なカットオフ値は6.0mg/dL、高血圧性腎症患者では6.8mg/dLと計算された。このほか、アロプリノールの使用は原疾患にかかわらず、いずれのエンドポイントの発生率とも有意な関連がないことも分かった。
これらの結果から著者らは、「CKD患者の臨床転帰に対する高尿酸血症の影響はCKDの原疾患によって異なり、原発性腎疾患と高血圧性腎症では、非腎関連転帰の独立した危険因子である」と結論付けている。

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