ウォーキングも場所によっては健康に有害に?

高齢者に健康のために近所をウォーキングするよう勧める医師は少なくないだろう。ところが、交通量が多く空気の悪い場所でこうしたアドバイスに従うと、むしろ健康に有害である可能性が英国立心肺研究所のKian Fan Chung氏らによる研究で示された。

この研究では公園でのウォーキングは肺機能や動脈硬化の指標を改善するが、交通量の多い通りでのウォーキングはそれほどの利益はなく、むしろこれらの指標を悪化させる場合もあることが明らかになったという。
詳細は「The Lancet」12月5日オンライン版に掲載された。

Chung氏らは今回、60歳以上の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者40人および虚血性心疾患患者39人と、年齢をマッチさせた健康な男女40人の計119人を対象としたランダム化クロスオーバー試験を実施した。
対象者に過去1年間で喫煙した経験がある人は含まれていなかった。

同試験では、対象者をロンドン市内の交通量が多い地区(オックスフォード通り)または公園(ハイド・パーク)のいずれかの場所で2時間をかけて平均で5km の距離をウォーキングする群にランダムに割り付けた。
その3~8週間後に場所を入れ替えて同じように2時間のウォーキングをしてもらった。

また、ウォーキングの前後およびウォーキング中には大気中の汚染物質〔黒色炭素や微小粒子状物質(PM)、超微粒子(UFP)、二酸化窒素(NO2)〕の濃度を測定し、対象者の心肺機能を含む健康状態も評価した。

その結果、ハイド・パークと比べてオックスフォード通りでは大気中の汚染物質の濃度が高いことが分かった。
また、COPD患者では、ハイド・パークをウォーキングした時と比べ、オックスフォード通りをウォーキングした時には咳や喀痰、息切れ、喘鳴が増えることが示された。

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さらに、COPD患者だけでなく虚血性心疾患患者や健康な男女を含めた全ての対象者において、ハイド・パークでのウォーキングによって肺機能や動脈硬化の指標である脈波伝播速度(PWV)や脈波増大係数(AI)が改善した。

その一方で、オックスフォード通りでのウォーキングによって健康な男女では肺機能の改善効果は小さく、運動による効果が大気中の汚染物質を吸い込むことで打ち消されてしまう可能性が示唆された。
また、全ての対象者でオックスフォード通りでのウォーキングによる動脈硬化の指標の悪化が認められた。

ただ、今回の研究ではスタチンやACE阻害薬、カルシウム拮抗薬などの薬剤を使用している虚血性心疾患患者では、オックスフォード通りをウォーキングしても動脈硬化の指標の悪化は認められなかったことから、Chung氏らは「虚血性心疾患患者はこれらの薬剤を使用すれば大気汚染による悪影響を防げる可能性がある」との見方を示している。

一方、論文の共著者で米デューク大学のJunfeng Zhang氏は「わずか2時間という短時間でも自動車の排気ガスにさらされるだけで心血管や呼吸器に有害であるとのエビデンスが、今回の研究によってさらに蓄積されることになった」とした上で、「大気中の汚染物質の規制や都市部での交通規制を強化する必要性が明確に示された」と強調している。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2017年12月6日
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