救急受診した胸痛患者への画像検査は無駄?

胸痛を訴えて救急外来を受診した患者に対して実施されている検査の一部は、病院での滞在時間の延長と高額な医療費、放射線の曝露リスクをもたらすだけで、予後の改善にはつながらない可能性があるとする研究結果が「JAMA Internal Medicine」11月14日オンライン版に掲載された。

この結果は米国心臓協会年次集会(AHA 2017、11月11~15日、米アナハイム)でも発表された。

米国では年間約1000万人が胸痛を訴えて救急診療部を受診している。
胸痛があると心筋梗塞を起こしている可能性があるため、胸痛患者に対しては血液検査や心電図、病歴聴取および診察により心筋梗塞かどうかを評価するのが一般的だ。
しかし近年、これらの検査に加えて非侵襲的に冠動脈の状態を調べることができる冠動脈CT血管造影(CCTA)や運動負荷試験が行われるようになった。

今回、米ワシントン大学医学部のDavid Brown氏らはCCTAおよび運動負荷試験を実施することで救急を受診した胸痛患者の予後が改善するのかどうかを検証するため、米国内の病院9施設で登録された患者1,000人のデータを分析した。

このうち88%(882人、平均年齢54.4歳、48%が女性)には一般的な検査に加えてCCTAまたは運動負荷試験が実施され、残る12%(18人、同53.2歳、42%が女性)には一般的な検査のみが実施されていた。
分析の結果、病院での平均滞在時間は追加検査を実施した群の28時間に対して追加検査を実施しなかった群では20時間と短く、追加検査を実施しない方が早く退院できることが分かった。

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また、救急を受診してから1カ月以内に血行再建術が必要となった患者や、救急を再び受診した患者の割合については、追加検査を実施した群と実施しなかった群との間に有意差は認められなかった。

一方、医療費は追加検査を実施した群の2,584ドル(約28万8,000円)に対して実施しなかった群では2,261ドル(約25万2,000円)とより低く、放射線曝露量も追加検査をしなかった群で有意に少なかった。

米国心臓病学会(ACC)の元会長であるRichard Chazal氏は「この研究は米国の救急診療部や胸痛センターにおける診断プロセスに疑問を投げかけるものだ」としている。
同氏によると、医師は心筋梗塞を見逃すことによる医療訴訟のリスクを減らすため、自分の身を守るために追加検査を実施している可能性が高いという。

ただ、同氏は「高精度の心筋マーカーであるトロポニン値の血液検査が普及しつつあるため、今後、追加検査は不要となるだろう」との見方を示している。

またChazal氏は「今回の研究では救急を受診してから1カ月間の追跡結果が報告されているが、それ以降も長期的に追跡するべきだ」としている。

さらに、今回1カ月以内の救急再受診率は追加検査を実施した群と実施しなかった群との間に有意差はなかったものの前者では3%、後者では6%だったことに言及し、「胸痛で救急を受診した患者に対しては、後にかかりつけ医を受診するよう指示してから帰宅させる必要がある」と注意を促している。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2017年11月15日
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