パンデミック下で全年齢層の女性、20代と80歳以上の男性の自殺が増加

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響によるものと考えられる自殺者数の増加を、性・年齢層別に解析した結果が報告された。女性は全年齢層、男性は20代と80歳以上で、パンデミック下での自殺による超過死亡が確認されたという。慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室の野村周平氏らの研究によるもので、「Psychiatry Research」11月号に論文が掲載された。

 COVID-19パンデミックにより自殺が増加していることが国内外から報告されている。野村氏も既に、警察庁発表データを解析し、パンデミック下で女性の自殺による超過死亡が認められることを報告している。ただし警察庁のデータは年齢が不明であり、対策を強化すべき対象が特定されていなかった。それに対して今回の研究では、厚生労働省の人口動態統計のデータを用いて、性別および年齢層別に詳細に解析した。

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 2015~2019年の自殺者に関するデータから、週ごとの自殺死亡者数の変化を把握。準ポアソン回帰モデルという統計学的手法を用い、過去5年間の同じ週の前後3週間の自殺死亡者数を基に、2020年の自殺死亡者数の予測値とその両側95%予測区間を算出。予測区間の上限を超える場合を自殺による超過死亡あり(何らかの原因により通常の予測を超える死亡者数の上昇)、予測区間の下限を下回る場合を過少死亡ありと判定した。また、予測値および予測区間に対する実際の自殺死亡者数の差幅を超過・過少死亡数とし、予測値に対する超過・過少死亡数の比を算出して自殺による超過・過少死亡率とした。

 まず女性の解析結果を見ると、2020年1~11月に6,251人が自殺により死亡していた。年齢層別では、70代が15.93%と最多で、続いて40代が15.50%、50代が15.20%だった。2020年の7月下旬以降、20歳未満と80歳以上を除いて毎週ではないものの断続的に自殺による超過死亡が観察された。20歳未満と80歳以上では、8月および10月に自殺による超過死亡が散発的に観察された。

 女性の自殺による超過死亡者数が最も多い年齢層は40代であり、上記期間中の超過死亡者数は93~223人と計算され、9月28日~10月4日の週が最多だった(35~42人、超過死亡率205.88~247.06%)。一方、過少死亡はほとんど見られず、4~5月に40~50代と80歳以上でごくまれに観察された。

 次に男性については、上記期間に1万2,581人が自殺により死亡していた。年齢層別では、40代が17.37%と最多で、続いて50代が16.79%、70代が13.65%だった。2020年の7月末以降、20代と80歳以上の自殺による超過死亡が認められ、11月初旬まで継続した。

 男性の自殺による超過死亡者数が最も多い年齢層は20代であり、上記期間中の超過死亡者数は72~274人と計算され、40代の女性と同様に9月28日~10月4日の週が最多だった(24~32人、88.89~118.52%)。一方、4~5月に20~60代で過少死亡が認められた週が存在した。

 以上から著者らは、「COVID-19パンデミックの生じた2020年に、日本の自殺率は7月下旬以降、全年齢層の女性、20代と80歳以上の男性で例年以上に増加していた」とまとめている。

 なお、日本の自殺率は長年、女性より男性、若年者より高齢者の方が高い状態が続いている。これに対して今回の研究結果から、パンデミック下では男性より女性、高齢者より若年者に、自殺による超過死亡が多い傾向がうかがえる。この点に関しては、「パンデミックに伴う雇用状況の悪化などが、女性や若年者により強く現れているのではないか」と著者らは推測。「性別と年齢層を考慮に入れて、経済的困難な状況にある人に対して社会的支援を促進することで、COVID-19パンデミック中の自殺を効果的に減らせるのではないか」と提言している。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2021年11月1日
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