体外受精での新鮮胚移植の方法が知りたい!

妊娠・出産を望んでいるにもかかわらず子どもを授かることができない時には、男女ともに不妊症の検査や治療を行います。本記事では、体外受精の中でも新鮮胚移植という方法を取り上げ、新鮮胚移植とは何なのか、移植の注意点やスケジュール、着床率、移植後の症状や注意点をご紹介します。
  1. 1. はじめに
  2. 2. 体外受精の新鮮胚移植とは
  3. 3. 新鮮胚移植の方法
  4. 4. 新鮮胚移植のスケジュール
  5. 5. 新鮮胚移植後の着床率
  6. 6. 新鮮胚移植後の症状や注意点
  7. 7. まとめ

はじめに

不妊治療は一般的に精子と卵子がタイミングよく出会うように施す治療や、人工的に精子を女性の子宮に注入する人工授精などがあります。以前はこれらの治療で妊娠が出来なかった場合は諦めるしかありませんでしたが、体外受精によって子供を授かるチャンスが広がりました。

体外受精は精子と卵子を体外で出会わせてできた受精卵(胚)を子宮に移植し、着床させ、妊娠・出産に導くものです。

今回は、体外受精の中でも新鮮胚移植という方法についての着床率、移植後の症状や注意点をご紹介します。

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体外受精の新鮮胚移植とは

新鮮胚移植とは、一度の月経周期のうちに女性から卵子を取り出し、受精させ、胚を移植する体外受精の方法です。

体外受精には他にも胚を凍結して次回以降の月経周期に移植する凍結胚移植があります。

体外受精では排卵誘発剤処置などで女性から1~複数個の卵子を採ってその全てを受精させます。それらの中から最も妊娠の可能性の高い胚(発生をはじめたばかりの受精卵)を選び出し、移植します。

このときに、子宮が着床する準備が十分に出来ていない場合には、胚を凍結させて次の移植のチャンスを探ります。

新鮮胚移植の方法

体外受精による不妊症治療を始めるにあたって、まずは治療周期に関する説明があります。
生活との兼ね合いや1回の治療で子どもが授からない場合の事前相談などを積極的にする事をおすすめします。
次に、卵子を採る確率を上げるための排卵誘発剤の前処置などを受けるか否かの選択と、受ける場合には前処置の開始があります。この排卵誘発剤処置は通院か自己注射かを選ぶことができます。
良く使用される排卵誘発剤を下にまとめます(括弧内は商品名)。

【卵胞を育てる薬】

  • クロミフェン(クロミッド、セロフェン、スパクロミン錠)
  • シクロフェニル(セキソビット)
  • レトロゾール(フェナミーラ)
  • アナストゾール(アリミデックス)
  • HMG(HMGテイゾー、フェリング、hMGコーワ、hMG「F」)
  • FSH(フェリルモンP、ゴナピュール)
  • recFSH(フォリスチム、フォリスチムペン、ゴナールF、ゴナールFペン)

【卵胞の成長のコントロールと排卵を抑制する薬】

  • GnRHアゴニスト(スプレキュア、プセレキュア、イトレリン、フセット、ナサニール、ナファレリール、リュープリン、リュープライド)
  • GnRHアンタゴニスト(ガニレスト、セトロタイド、セトロレニックス)

【卵胞の成熟と排卵を促す薬】

  • hCG(ゴナトロピン、hCGモチダ、プレグニール、hCG「F」、HCG)
次に、女性から卵子を男性から精子を採取します。

採卵前に超音波検査で卵子の入った卵胞が発育していることを確認できます。

採卵は、麻酔下でモニターを見ながら卵胞をチューブで吸い出します。
採取した精液からは運動性の高い精子を選んで濃縮します。

その後の受精には卵子に精子を振りかける体外受精法と顕微鏡下で精子を卵子に細い管で注入する顕微授精法の2つがあります。

受精卵(胚)は専用の機器内で培養し精子が卵子と融合しているか、胚が正常に胎児へと変化する準備をしているかを顕微鏡で確認します。最も状態良く胎児へ変化する準備が整った胚を専用のチューブを使って子宮の内膜に移植し着床させます。

その後、尿の妊娠反応で妊娠の有無を確定します。

新鮮胚移植のスケジュール

以下に治療の流れを示します。
  • 【採卵当日】採卵と採精を行い体外で卵子と精子を出合わせます。
  • 【採卵1日後】受精しているかを顕微鏡で確認します。
  • 【採卵2~3日後】卵割が起こっているかを顕微鏡で確認します。
  • 【採卵5~6日後】卵割が順調に進んでいるかを顕微鏡で観察します。
  • 【採卵2~6日後】子宮内膜の状態に合わせて卵割した胚を子宮内に移植します。
  • 【採卵約2週間後】着床し妊娠したことを判定します。

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新鮮胚移植後の着床率

これまでの説明にあるように、体外受精には多くのステップがあります。どの段階からの成功率なのか、また着床をどのように確認したかによって成功率は大幅に変わります。

ここでは日本産婦人科学会のデータを参考に、採卵してから子宮内に胎児の入っている袋(胎嚢)が確認できた時点を着床成功とします。

1991年では採卵してから着床まで確認できた割合は15.5%でした。その後わずかにですが着床率は上がり、16.3%(1994)、18.5%(1997)、21.0%(2000)、23.0%(2003)となりました。

その後は横ばいで現在でも22%前後という数値です。1回の治療における数値は決して高いものではありません。

新鮮胚移植後の症状や注意点

妊娠の確立を高めるために多く数の胚を移植することが考えられます。すると、多胎妊娠になる可能性が高まり母体と子供の安全が問題となります。

日本産婦人科学会では2008年に原則1胚移植のみにすること、35歳以上の女性で2回以上妊娠不成立であった場合では2胚移植まで認めることが決められています。しかし、最近では1胚移植と2胚移植で妊娠率に差が無い事が分かっています。

また、多くの体外受精実施施設で多胚妊娠の説明があります。多胚妊娠になった場合でも引き続きケアするために、新鮮胚移植施設と周産施設は連携していることが多いです。

まとめ

今回は、体外受精の方法のひとつである新鮮胚移植をご紹介しました。
体外受精をする場合は、夫婦、家族で事前に治療の期間や方法についてきちんと話し合いをすることが大切です。
事前の準備を入念にし、治療に専念できるようにしましょう!

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