寝室の騒音は男性不妊をもたらす?

強くて健康な精子は、静かな寝室で作られる可能性が、ソウル大学校(韓国)医学部予防医学のKyoung-Bok Min氏らによる研究で示唆された。この研究では、同国の成人男性20万人超を調べた結果、騒音レベルが高い環境に一定期間住んでいた男性では、その後男性不妊と診断される確率が14%上昇することが示されたという。

 米国立衛生研究所(NIH)によれば、米国人夫婦の約15%は、1年以上にわたって避妊しない状態で性交渉を持っても妊娠に至らない不妊カップルと推定されている。その原因は男性側と女性側のいずれか、あるいは両方にある場合があるが、男性側の要因としては精子の濃度や運動、形状の問題が考えられる。

 Min氏らは今回、20~59歳の男性20万6,492人の医療保険データとともに、居住地と全国騒音情報システムの情報を用いて、2002~2005年の日中および夜間の騒音への曝露と、2006~2013年の追跡期間中における男性不妊との関連について検討した。

 その結果、8年間の追跡期間中に3,293人(1.6%)が男性不妊と診断された。年齢、収入、喫煙、BMIなどの因子で調整したところ、4年間にわたって55デシベル以上の夜間の騒音に曝露した男性では、男性不妊と診断される確率が14%高いことが示された。55デシベルの騒音は郊外の道路の騒音に相当するという。

 なお、これまでにも騒音レベルが女性の早産や流産といった出産アウトカムに関連することが報告されていた。今回の研究には関与していない米ヒューストン・メソジスト病院生殖内分泌・不妊症専門医のJames Nodler氏は、「寝室の慢性的な騒音は、妊孕性に重要な他のホルモンの放出を促す脳内のGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)の産生を抑制する可能性が指摘されている。GnRHの産生が抑制されれば、男女を問わず妊孕性を維持するためのバランスが崩れる」と説明。その上で、不妊が心配な男性に対する助言として、ベッドでテレビなどを視聴せず、寝室の騒音レベルを抑えて良好な睡眠衛生を維持することを勧めている。

 一方、この研究結果について別の専門家は「寝室の騒音と男性不妊との間に因果関係があることを示すものではない」と指摘。Nodler氏も、今後の研究で騒音のある寝室で眠る男性と静かな寝室で眠る男性のホルモンレベルを測定し、生物学的な要因を明らかにする必要があるとしている。

 この研究結果は「Environmental Pollution」7月号に掲載された。

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参考:リンク先
HealthDay News 2017年7月7日
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