緑茶摂取でインフルエンザ予防――日本人職域多施設研究

 緑茶の摂取がインフルエンザ予防になるかもしれない。その可能性を示唆するデータが報告された。福岡女子大学国際文理学部食・健康学科の南里明子氏らの研究によるもので、緑茶の摂取量が多い人ほどインフルエンザ罹患リスクが低いという有意な関連が示された。詳細は「European Journal of Clinical Nutrition」に11月2日掲載された。

 南里氏らの研究は、血清ビタミンD値とインフルエンザの罹患リスクを検討する目的で、関東・東海地方の企業4社の従業員を対象に行われたコホート研究のデータを用いて行った、コホート内症例対照研究。なお、そのコホート研究の結果は、ワクチン接種を受けていない群でのみビタミンDレベル高値が、インフルエンザ罹患リスクが低いことと有意に関連するというものだった。

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 コホート研究対象者のうち、緑茶の摂取頻度などの生活習慣に関するアンケート調査にも回答していたのは3,327人(18~73歳)で、そのうち2011年11~2012年4月にインフルエンザと診断されたのは182人だった。インフルエンザを発症しなかった人の中から、年齢、性別、勤務先をマッチングさせた上で、ランダムに1対2の割合で抽出した364人を対照群とした。緑茶の摂取量は、1週間での摂取杯数をもとに、ほとんど飲まない(週に1杯未満)、ときどき飲む(週に1~4杯)、ほぼ毎日飲む(週に5杯以上)の3群に分けて解析した。

 データ欠落などのため、最終的な解析対象は、発症群179人、対照群353人となった。この両群間で、年齢、性別(女性の割合)、BMI、喫煙者率、身体活動量などの他、インフルエンザ罹患リスクに影響を与え得る、ワクチン接種率、通勤のための公共機関の利用状況、血清ビタミンD値は、いずれも有意差がなかった。ただし、学童と同居している人の割合は、発症群が46.9%、対照群が36.8%で、前者が有意に高かった(P=0.02)。

 条件付きロジスティック回帰分析により前記の背景因子で調整後、緑茶をほとんど飲まない群に比較して、ほぼ毎日飲む群のインフルエンザ罹患リスクは、オッズ比(OR)0.61(95%信頼区間0.39~0.95)であり、有意なリスク低下が認められた。また、緑茶摂取量が多いほど、インフルエンザ罹患リスクが低いという有意な関連が存在した(傾向性P=0.028)。

 インフルエンザの罹患を、診断キットを用いて診断されていた症例(65%、116人)に限定して解析した場合、緑茶をほぼ毎日飲む人のインフルエンザ罹患リスクはOR0.68(95%信頼区間0.39~1.18)であった。また、ワクチン接種の有無別に解析すると、非接種群では緑茶をほぼ毎日飲む人のOR0.48(同0.28~0.82)と有意に低下していたのに対し、接種群ではOR0.92(同0.39~2.20)であり、ワクチン接種群では緑茶摂取によるリスク低下が認められなかった。

 著者らは、本研究はもともと緑茶摂取によるインフルエンザ罹患リスクへの影響を検討するためにデザインされたものではないことなど、結果を解釈する際の限界点を述べた上で、「日本人労働者において、緑茶の頻繁な摂取はインフルエンザ罹患リスクの低下と関連している」と結論付けている。今後は、インフルエンザ罹患を診断キットなど客観的な方法で把握することや、ワクチン接種と緑茶摂取との交互作用の検討を含めた追試が望まれる。

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HealthDay News 2020年11月24日
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