腸内細菌が漏れ出すことによる動脈硬化進行を便秘薬が抑制 動物実験で効果を確認、横浜市大

動脈硬化の進展に腸内細菌の漏出が関与しており、腸管バリア機能を強化する新規便秘薬がその経路を抑制する可能性が、横浜市立大学医学部循環器・腎臓・高血圧内科学の石上友章氏、荒川健太郎氏らによる研究で示された。詳細は「PLOS ONE」に6月17日掲載された。

血清脂質や血圧、血糖の管理が徹底されるようになり、動脈硬化の発症・進展は抑制されてきてはいるが、その効果は十分とは言えず、日本を含む先進国において、いまだ動脈硬化性疾患が死亡原因の上位に位置する。このため、動脈硬化の進展には、既知のリスクとは異なる「残余リスク」と呼ばれる機序の存在が想定されており、その探索が続けられている。

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残余リスクの一つとして近年、腸内細菌の関与が注目されている。例えば石上氏らは、不適切な食生活により腸内細菌が体内に取り込まれ、脾臓からIgG/IgG3という抗体が分泌されることで動脈硬化が促進されることを報告してきた。

今回、同氏らの研究グループは、動脈硬化を易発症するApoEノックアウトマウスに対し、高カロリー・高脂肪食を15週間与えた後、クロライド・チャネル活性化薬「ルビプロストン」を投与し、動脈硬化の進展の程度を検討した。ルビプロストンは腸上皮に作用する比較的新しい便秘薬で、腸管バリア機能の低下を防ぐことが知られている。ルビプロストン投与群とは別に、他の機序による便秘薬(センノシド、マグネシウム)を投与する群を比較対照とした。

投与開始から10週後、ルビプロストンを投与した群は投与しなかった群に比べて、動脈硬化の進展が約60%有意に抑制されていた。他の2剤では有意な動脈硬化抑制は観察されなかった。また、IgGはルビプロストン投与群で有意に抑制され、IgG3はルビプロストン投与群とマグネシウム投与群で有意に抑制されていた。

以上より同氏は「動脈硬化の進展には、腸内細菌の血中への移行を制御する、腸管粘膜のバリア機能の障害が関係しており、ルビプロストンがその病態を修正し、抗動脈硬化作用を発揮する可能性が明らかになった。今後はヒトを対象にした研究により、動脈硬化の根治につながる治療法の開発を目指していきたい」と語っている。

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HealthDay News 2019年7月29日
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