加熱式たばこも血管に有害―従来たばこと同程度に影響

加熱式たばこ製品の「iQOS(アイコス)」は血管に悪影響を与えることが米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のグループによる研究で明らかになった。

iQOSの蒸気に曝露したラットの血管内皮機能は、一般的な紙巻きたばこの煙に曝露したラットと同程度に低下していたという。
この研究結果は米国心臓協会年次集会(AHA 2017、11月11~15日、米アナハイム)で発表された。

加熱式たばこはたばこの葉を燃やさず加熱して生じた蒸気を吸って楽しむ製品で、従来の紙巻きたばこと比べて安全性が高いとされている。
このうち大手たばこ企業のフィリップモリス社が製造するiQOSは既に米国外の複数国で販売され、米国でも米食品医薬品局(FDA)に対し承認が申請されている。

同社は「たばこ葉を摂氏600度で燃やす通常の紙巻きたばこは有害物質を含んだ煙を発生させるが、摂氏350度で加熱するiQOSではニコチンが含まれた蒸気は生じるが煙は出ないため、従来の紙巻きたばこよりも安全」としている。

今回、UCSF医学部循環器内科学教授のMatthew Springer氏らはラットに(1)iQOSを加熱した蒸気(2)紙巻きたばこ(マールボロ)の煙(3)清浄な空気―のいずれかを曝露させた上で、血流依存性血管拡張反応(flow-mediated dilation;FMD)検査により血管内皮機能を評価した。
曝露は1回15秒間とし、5分間に10回行った。

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その結果、血管内皮機能はiQOS群で58%、マールボロ群では57%低下した。
また、曝露を1回5秒間として5分間に10回行ってもiQOS群で60%、マールボロ群では62%の低下が認められ、iQOSの蒸気への曝露はマールボロに曝露した場合と同程度の血管内皮機能の低下をもたらすことが示された。

Springer氏によると、血管内皮機能の低下は動脈硬化をもたらし、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを高めるとされている。
同氏は「循環器系におけるたばこの煙への反応の仕方はヒトとラットで極めてよく似ているため、この研究結果はヒトにも当てはまる可能性がある」とした上で、「加熱式たばこの使用者は紙巻きたばこの喫煙者と同様に心血管の健康障害に直面する可能性がある」との見方を示している。

また、同氏は「加熱式たばこは煙は出さないが、血管の状態を悪化させるさまざまな化学物質を含んだ蒸気を発生させる」と説明。
「具体的にどの化学物質が問題なのかははっきりと分かっていないが、最大の問題はニコチンではないとみている」としている。

さらに同氏は「iQOSの承認の過程で今回の研究結果が考慮されることを望んでいる」とした上で、「独立した適切な研究に基づいて判断することが最も重要であり、事実による裏付けがないにもかかわらず従来のたばこよりも害が少ないと謳うべきではない」と話している。

この研究は米国立衛生研究所(NIH)とFDAによる資金提供を受けて実施された。
学会発表された研究は通常、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2017年11月14日
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