早期乳がん患者の内分泌療法、より短期間でも予後変わらず

ホルモン受容体陽性の早期乳がん患者への内分泌療法の期間は5年間が標準とされていたが、その後さらに5年間継続しても、2年間継続した場合と比べて予後に差はないことがオーストリアで実施されたランダム化比較試験(RCT)で示された。

この試験結果はサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS 2017、12月5~9日、米サンアントニオ)で発表された。

この試験を率いたウィーン医科大学総合がんセンターのMichael Gnant氏によると、乳がん治療の進歩にかかわらず、早期乳がん患者のうちホルモン受容体陽性の患者は再発リスクが持続してみられることが分かっている。
そこで、一般的に再発予防のために乳がん細胞の増殖を促すエストロゲンを抑える薬剤を用いた内分泌療法が行われる。

こうした患者に対する内分泌療法の標準的な期間は5年間とされていたが、近年の研究ではより長期の内分泌療法によって再発リスクがさらに低減することが示されているという。
ただ、どの程度治療を延長すべきかについては不明だった。

今回の試験では、術後に5年間の内分泌療法(タモキシフェン、アロマターゼ阻害薬のいずれかまたは両方を使用)を受けたホルモン受容体陽性で閉経後の早期乳がん患者約3,500人を、同療法をさらに2年延長(通算で7年間)する群と、5年延長(同10年間)する群にランダムに割り付けた。
その結果、診断から平均で14年後の時点で再発することなく生存していた患者の割合は、2年延長群と5年延長群のいずれにおいても78%だった。
一方、骨折の発生率は5年延長群の6%に対して2年延長群では4%と低かった。

乳がんに関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
お近くの治験情報を全国から検索できます。

この結果を踏まえ、Gnant氏は「内分泌療法は2年の延長で十分であり、それ以上の治療を行うべき理由はない。
また、治療期間が短い方が骨折などの副作用の低減につながる」と説明している。

内分泌療法で使用されるアロマターゼ阻害薬などの薬剤では骨折やホットフラッシュ、性機能不全、筋肉痛および関節痛などの副作用が問題となることがある。
今回の試験には関与していない米ペンシルベニア大学AbramsonがんセンターのSusan Domchek氏は「内分泌療法がうまくいく患者がいる一方で、副作用に苦しみ治療を中止したいと望む患者もいる」と説明する。

ただ、Domchek氏や米ダナ・ファーバーがん研究所のErica Mayer氏は「再発リスクなどに基づき個別に治療を決定する必要がある」と強調。
今回の試験結果は患者ごとに適した治療を決める際に、その選択肢を広げることにつながるが、再発リスクの高い一部の患者には長期の内分泌療法が有益である可能性があるとの見解を示している。

今回報告された試験は、内分泌療法で使用される薬剤を製造するAstraZeneca社の資金提供を受けて実施された。
なお、学会発表された研究は査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。

治験に関する詳しい解説はこちら

治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。

治験・臨床試験についての詳しい説明

参考情報:リンク先
HealthDay News 2017年12月7日
Copyright c 2017 HealthDay. All rights reserved.
SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
記載記事の無断転用は禁じます。