日本食らしい食事に変えると認知症リスクが低下

 日本食パターンの食事(日本食らしい食事)を取っている人は認知症のリスクが低いことが知られている。しかし、その食生活を維持せずに、日本食パターンから遠い食生活に変化してしまった人は認知症リスクが上昇してしまうことが、3,000人以上の日本人を追跡した結果から明らかになった。反対に、日本食パターンに近い食生活に変化した人は、認知症リスクが低下するという結果だ。

 この研究は、東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野の陸兪凱氏、辻一郎氏らの研究グループが行ったもので、詳細は「Clinical Nutrition」に12月5日掲載された。これまでにも同研究グループの報告から、一時点の食事パターンと認知症リスクとの関連が示されていた。しかし、観察対象者を一定期間追跡する縦断研究から、食事パターンの変化と認知症リスクとの関係が示されたのは今回が初めてという。

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 陸氏らはこの研究に、1994年実施の「大崎国保コホート研究」と2006年実施の「大崎市市民健康調査」のデータを用いた。この2回の調査の両方に協力していた人から、死亡者、転居者、既に要介護認定を受けていた人、食事アンケートに回答しなかった人などを除外した3,146人(ベースライン時の平均年齢74.0±5.4歳、男性46.4%)を解析対象とした。

 日本食らしさの評価には、8項目からなる日本食指数(the 8-item Japanese Diet Index;JDI8)スコアを用いた。これは、米飯・みそ汁・海藻・漬物・緑黄色野菜・魚・緑茶の摂取量が多い場合に加点、牛肉または豚肉の摂取量が多い場合に減点して、合計0~8点のスコアで評価するもの。点数が高いほど日本食パターンに近い(日本食らしい)食生活と判定される。

 今回の研究では、1994年調査と2006年調査のJDI8スコアを比較して、2点以上低下した人(584人)、1点低下した人(599人)、変化がなかった人(784人)、1点増加した人(635人)、2点以上増加した人(544人)の5群に分けて、認知症のリスクを検討した。2回の調査期間中にJDI8スコアが2点以上低下した人(日本食パターンでない食生活に大きく変化した人)は、喫煙習慣があり、摂取エネルギー量や歩行時間が少なく、高血圧や糖尿病・心筋梗塞の既往のある人が多かった。

 1万4,336人年(平均5.0±1.4年)の追跡で231人(7.3%)が認知症を発症した。認知症の発症に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、学歴、心理的ストレス、1994年調査時のJDI8スコア、両調査時のBMI、喫煙・飲酒習慣、歩行時間、摂取エネルギー量、既往疾患など)で調整後、JDI8スコアが変化しなかった群を基準に、他の群の認知症リスクを比較した。

 その結果、JDI8スコアが2点以上低下した群はハザード比(HR)1.72(95%信頼区間1.13~2.62)で、有意なリスク上昇が認められた。JDI8スコアが1点低下した群はHR1.10(同0.73~1.66)、1点増加した群はHR0.82(同0.54~1.25)、2点以上増加した群はHR0.62(同0.38~1.02)であり、JDI8スコアの増加が大きくなるほど認知症リスクが低下するという有意な相関が認められた(傾向性P<0.0001)。

 著者らは、認知症の家族歴や社会経済的因子が調整されていないことなどの解釈上の限界点を挙げた上で、「食習慣が日本食パターンに近づくことは認知症のリスク低下と関連し、日本食パターンから遠ざかることは認知症リスクの上昇と関連していることが示唆される」と結論付けている。

 また考察として、「日本食は、認知症リスク低下との関連が報告されている地中海食と同様に、野菜や果物、魚の摂取量が多く、そのことによる抗酸化・抗炎症作用が認知症リスクを抑制するのではないか。加えて日本の食生活には、やはり認知症リスク低下との関連が報告されている緑茶の摂取量が多いという特徴もある」と述べている。

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HealthDay News 2021年2月1日
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