日本食で死亡リスクが低下――JPHC研究

日本食は、やはり体に良いようだ。日本食パターンのスコアが高い食生活を送っている人ほど死亡リスクが低いという、縦断研究の結果が報告された。国立がん研究センターなどによる多目的コホート研究(JPHC研究)によるもので、詳細は「European Journal of Nutrition」7月16日オンライン版に掲載された。
今回の研究の対象者は、1995年と1998年に、全国11カ所の保健所管轄区域に住んでいた45~74歳の住民のうち、食事調査アンケートに回答した10万2,341人から、がん、脳卒中、心筋梗塞、慢性肝炎などの既往のある人や、摂取エネルギー量が極端に偏っている人(上位または下位2.5%以内)を除外した9万2,969人で、平均年齢は56.5±7.8歳、男性が45.9%。この人たちを2016年まで追跡して、食生活の日本食パターンと死亡リスクとの関連を調査した。

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どのような食生活が日本食パターンに近いかは、ご飯、みそ汁、海藻、漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶の摂取量の多さと、牛肉・豚肉の摂取量の少なさを点数化する「日本食インデックス(8-item Japanese Diet Index;JDI8)」を用いてスコア化し評価した。対象者全体をJDI8スコアで四分位に分け、18.9年(中央値)追跡した。追跡率は99.7%だった。
追跡期間中に2万596人(22.2%)の死亡が確認された。年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、摂取エネルギー量、降圧薬・脂質低下薬・血糖降下薬の使用、職業などで調整後、JDI8スコアの第1四分位群(スコアが最も低い群)を基準に、他の四分位群の、全死亡、がん死、循環器疾患死、心疾患死、脳血管疾患死のリスクを解析した。
その結果、第4四分位群(スコアが最も高い群)の全死亡のハザード比(HR)は0.86(95%信頼区間0.81~0.90)で、リスクが14%有意に低かった。さらに第3四分位群(HR0.91)や第2四分位群(HR0.95)も有意にリスクが低く、日本食パターンのスコアがより高いほど全死亡のリスクが低下するという関係が認められた(傾向性P<0.001)。循環器疾患死(傾向性P=0.007)や心疾患死(傾向性P=0.037)にも、同様の有意な関係が認められた。一方、がん死や脳血管疾患死のリスクとJDI8スコアとの間には、有意な関係が確認できなかった。
続いて、JDI8で評価した8種類の食品それぞれの摂取量を「多い/少ない」の2群にわけ、「少ない」群を基準に「多い」群の全死亡のリスクを検討。すると、海藻の摂取量が多い群はHR0.94で、リスクが6%有意に低かった。同様に、漬物ではHR0.95、緑黄色野菜ではHR 0.94、魚介類ではHR 0.97、緑茶ではHR0.89となり、これら各食品の摂取量が多い群の全死亡リスクが有意に低かった。ご飯やみそ汁、牛肉・豚肉に関しては、摂取量の多寡による全死亡リスクの相違は有意でなかった。
これらの結果を研究グループは、「日本食パターンスコアの高い食生活は、全死亡、循環器疾患死、心疾患死のリスク低下と関連している」とまとめるとともに、その理由について「日本食パターンのスコアが高い群では、海藻や漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶に含まれる健康に有益な栄養素(食物繊維や抗酸化物質、カロテノイドやエイコサペンタエン酸など)の摂取量が多かったことが考えられる」と考察している。
なお、がん死との関連が有意でなかった点については、「食品や栄養素の種類とがんリスクの関係はがんの部位によって異なることから、全がん死では有意にならなかった可能性があり、今後のさらなる研究が必要」と述べている。
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