日本人はCOVID-19に対する意識が低い?――英国やスペインとの比較

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する国民の意識を、国際比較した研究結果が報告された。日本人はCOVID-19に対する不安が少なく、感染回避行動をとる人の割合が低いことなどが明らかになった。千葉大学社会精神保健教育研究センターの椎名明大氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of General Psychiatry」に2月18日掲載された。

 COVID-19パンデミックに対する国民の反応は国ごとに異なる可能性があり、実効性のある対策を取るには、その違いを把握することが欠かせない。椎名氏らは、日本と英国、スペインの一般住民を対象に同じ内容のアンケート調査を実施し、回答を比較検討した。英国は日本同様に島国という地理的条件が共通しているが、感染者数は英国の方が圧倒的に多い。またスペインは他国と地続きであり、かつ感染者数は英国よりもさらに多いという、国ごとの特徴がある。

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 アンケートはインターネット上で20歳以上の成人対象に行われ、日本から4,000人、英国とスペインからは各2,000人が回答した。年齢(10歳ごと)と性別で層別化され、各群の回答者数が等しくなるように調整された。アンケート実施時期は、日本では2020年3月下旬(パンデミック第一波中)、他の2カ国は4月中旬だった。

 結果について、最初に各国の感染状況を比較すると、家族や親戚に感染した人がいるとの回答は、日本が0.4%、英国25.1%、スペイン39.0%であり、職場に感染した人がいるとの回答は同順に、1.1%、17.2%、18.9%だった。

 次に、COVID-19に関する知識レベルの主観的評価を見ると、日本は他の2カ国に比較して有意に低いことが分かった(英国とスペインは有意差なし)。COVID-19に対する不安は、英国が最も高くて次がスペインで、日本は最も低く、それぞれの差が有意だった。また、他者へ感染させることの不安も、日本は他の2カ国より有意に低かった(英国とスペインは有意差なし)。

 COVID-19関連の情報へのアクセス頻度を比較すると、公式発表、マスコミ、ソーシャルネットワークサービス(SNS)などの全てについて、日本は他の2カ国よりも有意に低かった。例えば、「公式発表を一度も聞いたことがない」との回答が、日本は他の2カ国の約2倍だった。また、日本ではほぼ全ての情報源について、信頼していない人の割合が高かった。なお、SNSについては3カ国とも信頼性が低いと判断されていた。

 感染予防対策のうちマスク着用率は英国で低く、57.7%が「マスクを着用したことがない」と回答した。その割合はスペインでは16.1%、日本では9.5%だった。手洗いに関しては、英国で頻繁に手を洗うとの回答と、手を洗ったことがないとの回答が拮抗するなど、一貫した傾向が見られなかった。

 外出自粛に関しても、日本は消極的だった。具体的には、混雑している場所を避ける、公共交通機関を利用しない、通学や通勤を控えるとの回答が、他の2カ国より有意に少なかった。

 これらの結果に基づき、著者らは以下の考察を述べている。まず、日本の一般住民のCOVID-19に対する意識が他の2カ国より全般的に低いことは、パンデミックの規模が大きく異なることで説明可能としている。また、調査時期が日本の方がやや早かったことも、結果に影響を与えた可能性があるという。

 一方、マスク着用率が英国で極めて低いことについては、「パンデミックの規模では説明できない。政府の推奨が影響を及ぼしたのかもしれない」と述べている。この調査が実施された時点では、世界保健機関(WHO)がマスク着用を積極的に推奨しておらず、英国政府も同様の方針をとっていた。それに対して日本はパンデミック以前からマスク着用率が高く、かつ花粉症対策でマスクを着用していた人も少なくなかった。

 結論として著者らは、「COVID-19パンデミック中の一般住民の認識と行動に関する、国際的な違いが明らかになった。これらの違いは、パンデミック対策を国ごとに個別化する必要があることを示唆している」と記している。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2021年4月5日
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