Life’s Simple 7の理想項目を1つ増やすと蛋白尿リスクが1割低下

 心血管疾患リスク因子の該当数が、蛋白尿の出現と有意に関連していることが分かった。東京大学医学部循環器内科の金子英弘氏らが全国規模の健診データを解析した結果、明らかになった。リスク因子を1年で1つ減らすと、蛋白尿出現リスクが1割低下するという。研究の詳細は「American Journal of Nephrology」に3月8日掲載された。

 蛋白尿は腎機能低下の指標であるだけでなく、心血管疾患(CVD)のリスクとも関連しており、CVDを防ぐには血糖や血圧などのコントロールに加えて、蛋白尿を陰性に保つことが重要と考えられている。他方、米国心臓協会(AHA)はCVDリスク抑制のために、7つの生活習慣関連因子をCardiovascular Health Metrics(Life’s Simple 7)としてまとめ、啓発活動を続けている。ただし、この7因子が日本人の蛋白尿リスクと関連するかは不明であった。

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 金子氏らはこの点を明らかにするため、健診受診者データを用いた観察コホート研究を実施した。検討対象は、2005~2016年に健診を受け、4年以内に再度健診を受けていた成人86万5,087人〔年齢中央値46歳(四分位範囲40~54)、男性60.7%〕。初回健診時に尿蛋白が陽性(1+以上)だった人や透析既往者などは除外されている。

 AHAが掲げる7因子に基づいて、以下のようにCardiovascular Health(CVH)Metricsをカウント。血圧120/80mmHg未満、総コレステロール200mg/dL未満、空腹時血糖値100mg/dL未満(いずれも未治療状態での測定値)、BMI25未満、非喫煙、習慣的運動(30分の運動を週に2回以上または1日あたり1時間以上の歩行)、健康的食習慣(朝食の欠食が週に3回未満)。これらをCVH metricsとして、その該当数と蛋白尿の出現リスクとの関連を検討した。

 解析対象者のCVH該当数は、中央値5(四分位範囲3~6)だった。CVHの該当数が2個未満の群、3~4個の群、5個以上の群という3群に分けると、該当数が多い群ほど若年で女性が多いという有意差が見られた。

 4年間の追跡で、4万1,474人(4.8%)に蛋白尿が出現した。年齢と性別の影響を調整後、前記のベースライン時のCVH該当数による3群で比較すると、該当数が多い群ほど、蛋白尿出現リスクが低かった。具体的には、2個未満の群を基準として3~4個の群はオッズ比(OR)0.61(95%信頼区間0.59~0.63)、5個以上の群はOR0.45(同0.43~0.46)だった(傾向性P<0.001)。

 7つのCVH因子を個別に検討すると、以下に記すように、総コレステロールを除く全てが蛋白尿出現リスクの低さと有意に関連していた。BMI25未満でOR0.70、空腹時血糖100mg/dL未満でOR0.74、非喫煙でOR0.80、血圧120/80mmHg未満でOR0.81、健康的食習慣でOR0.82、習慣的運動でOR0.95(いずれもP<0.001)。

 また、ベースライン時のCVH該当数が1つ多いごとに、蛋白尿出現リスクが2割低くなるという有意な関連の存在が明らかになった〔OR0.81(同0.80~0.82)〕。さらに、ベースライン時から1年間でCVH該当数が1つ増えると蛋白尿出現リスクが1割低下するという、生活習慣改善の有意な効果も認められた〔OR0.90(同0.89~0.92)〕。

 著者らは本研究を、「CVH metricsと蛋白尿出現の関係を示した初の研究」と位置付けている。結論としては、「ベースラインでのCVH metricsの該当数が多いほど蛋白尿出現リスクが低く、また、追跡期間中にCVH metrics該当数が増えることが蛋白尿出現リスクの低下と関連していた。この結果は、修正可能な生活習慣関連因子の重要性を示唆しており、蛋白尿抑制における生活療法の可能性を示すものと言える」とまとめている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2022年4月18日
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