日本人の慢性透析の生涯リスクは男性3.14%、女性1.42%――新潟大

日本人男性の32人に1人、女性の71人に1人は、亡くなるまでの間に慢性透析が必要になるとする報告が「Clinical and Experimental Nephrology」2月10日オンライン版に掲載された。

 生まれてから亡くなるまでの間に何かの疾患・状態になる確率のことを「生涯リスク」といい、その疾患・状態の危険性を一般市民へ端的に伝える際によく使われる。例えば、がんの生涯リスクは男性49.01%、女性37.36%と報告されており(2001年時点)、「男性は約2人に1人、女性は約3人に1人が生涯で一度はがんにかかる」といった言い方がされる。しかし国内の末期腎不全の生涯リスクはまだ報告されていない。

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 今回、新潟大学大学院医歯学総合研究科地域医療長寿学講座の若杉三奈子氏らは、日本透析医学会の年次調査データおよび厚生労働省の人口動態統計を利用。末期腎不全のため慢性透析療法(急性疾患による一時的な透析を除く透析療法)が必要になる生涯リスク、および死亡リスクを割り出した。

 その結果、慢性透析療法のリスクは男女ともに40歳ごろから上昇し始め、90歳前後で頭打ちになることがわかった。そして生涯リスクは、男性3.14%(95%信頼区間3.10~3.18)、女性は1.42%(同1.39~1.44)と計算された。これは、男性約32人に1人、女性約71人に1人が生涯の一定期間、慢性透析が必要になることを意味する。

 5歳ごとに層別化すると、男性は75~79歳、女性は80~84歳の5年間に、リスクが大きく上昇することがわかった。また年齢別に将来のリスクを計算すると、40歳の男性が80歳までに慢性透析が必要になるリスクは2.21%、50歳の男性は2.04%、60歳の男性は1.69%となった。同様に女性では、40歳の0.88%、50歳の0.82%、60歳の0.68%が、80歳までに慢性透析が必要になると考えられた。

 今回の研究では、男性の慢性透析リスクが女性の2倍以上という大きな性差が見られたが、研究グループによるとこのような性差の存在は日本だけでなく他国も同様であり、例えば米国では男性3.96%、女性2.84%という生涯リスクが報告されているという。なお、日本は人口当たりの透析患者数が多いにも関わらず、慢性透析の生涯リスクが米国の報告より低いことに関し、その理由を「透析患者数は新規透析導入件数と透析期間の積であるのに対し、生涯リスクは透析期間の長さに影響されないため」と解説している。

 著者らは、「この研究は慢性透析を必要とする末期腎不全の生涯リスクに関する国内初の研究」とし、「このような容易に理解できる情報は、公衆衛生における疾患啓発に役立つだろう」と述べている。

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HealthDay News 2020年3月9日
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