平均寿命や健康寿命に地域格差 医療資源の増加や生活習慣因子以外の要因も、東大ら

日本では1990年から25年の間に平均寿命は4.2歳延びた一方で、都道府県間の「健康格差」には拡大傾向がみられることが、東京大学大学院国際保健政策学の野村周平氏と主任教授の渋谷健司氏らの研究グループの調べで分かった。こうした地域における健康格差の拡大には医療資源の増加や死亡に寄与する生活習慣因子は強く影響していない可能性も示唆されたことから、研究グループは今後、格差が生じる要因を検証し、適切な対策を講じる必要があると強調している。詳細は「Lancet」7月19日オンライン版に掲載された。

 国民皆保険制度を保つ日本は、世界でも健康政策に成功した国の1つに数えられているが、健康の増進レベルには地域格差が存在し、しかもこの格差は年々広がっていると懸念されている。研究グループは今回、世界の疾病負荷研究(The Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study;GBD)の一環として、米ワシントン大学保健指標・保健評価研究所(IHME)と共同で、1990~2015年における日本の健康指標の変化と各都道府県の健康指標の改善状況について分析を行った。

 研究グループは、GBDの研究データを用いて死亡、疾病、外傷の315の原因と79の危険因子について発生率と有病率を調べ、各都道府県における疾病負荷(各種の健康指標)の1990~2015年の推移を評価した。健康指標には、死亡率、死亡原因、損失生存年数(YLL)、障害生存年数(YLD)、障害調整生存年数(DALY)、平均寿命、健康寿命を用いた。

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 その結果、平均寿命は1990年から25年の間に79.0歳から83.2歳へと4.2歳延びた一方で、都道府県の格差(最も長い県と短い県の差)も2.5歳から3.1歳へと拡大していた。同様に、健康寿命の格差も2.3歳から2.7歳へと拡大していた。年齢調整死亡率はこの25年間で全体では29.0%低下したが、都道府県間のばらつきは大きく、低下率が最も大きい県は32.4%、最も低い県は22.0%と開きがあった。同期間中、年齢調整DALYは19.8%減少したが、YLDは3.5%の減少に止まり、疾患や障害を抱えながら生きている人の割合が増えている傾向がみられた。

 また、死亡に寄与する因子を分析したところ、2015年における死亡の33.7%が食習慣や喫煙などの生活習慣、24.5%が代謝系のリスクを原因としており、特に「不健康な食生活」と「喫煙」が死亡や疾病負荷と関連していることが分かった。

 さらに、地域で健康格差が拡大している要因を分析したところ、1人当たりの医療費や人口当たりの医師・看護師・保健師の数、全死亡に大きく寄与していた生活習慣と都道府県間の健康格差との間には有意な関連はみられなかった。そのため、研究グループは「保健システム上の因子や従来の危険因子以外に健康格差を生じうる要因が存在する可能性が示唆されており、さらなる研究が必要だ」と述べている。

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HealthDay News 2017年8月16日
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