初潮から閉経までの期間が長いと認知機能障害のリスクが低い――JPHC研究

初潮から閉経までの期間が長い女性は認知機能障害のリスクが低いとするデータが報告された。国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの研究によるもので、詳細は「Maturitas」10月号に掲載された。
動物を用いた実験で、女性ホルモンのエストロゲンには、脳の中の記憶に関係する海馬という場所の神経伝達機能を活性化する作用があることが報告されている。しかしヒトにおいては、女性ホルモンが認知機能と関連するとの疫学研究があるものの、一致した結果は得られていない。エストロゲンの血中濃度は、月経周期や妊娠・出産・閉経などの影響を受けるため、それらの因子が研究の結果に影響を与えていることが考えられる。

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今回発表された研究は、1990年に長野県南佐久郡の一般住民を対象に行った健康関連調査の回答者約1万2,000人(40~59歳)のうち、2014~2015年に行った「こころの検診」にも参加した女性から、うつと診断された人を除外した670人のデータを解析したもの。こころの検診における認知機能検査と医師の判定により、670人中227人が認知機能障害(軽度認知障害が196人と認知症が31人)と診断された。
この227人について、アンケート調査から得た月経に関連する情報(初潮年齢、月経規則性、月経周期、出産回数、初産年齢、授乳経験、女性ホルモン剤服用経験、閉経年齢、初潮から閉経までの期間など)と、認知機能障害の発症リスクとの関連を検討した。認知機能に関連する因子(年齢、BMI、教育歴、喫煙習慣、余暇・運動活動状況、高血圧や糖尿病・うつの既往)の影響は調整した。
その結果、初潮から閉経までの期間が長いほど、認知機能障害のリスクが有意に低下することがわかった(傾向性P=0.032)。具体的には、初潮から閉経までの期間が33年以下の人の認知機能障害発症リスクを1とした場合、38年以上の人のリスクは0.62となり、38%の有意なリスク低下が認められた(P<0.05)。なお、34~37年の人のリスクは0.89だが、この低下率は有意でなかった。
続いて認知機能障害を軽度認知障害と認知症に分けて解析すると、軽度認知障害については結果が変わらず、初潮から閉経までの期間が長いほどリスクが低下していた。一方、認知症に関してはリスク低下が有意でなくなった。この点について著者らは「認知症と診断された女性が31人と少なかったため、今後人数を増やして検討する必要がある」と述べている。
以上の結果から、エストロゲンの曝露期間が長いほど認知機能障害を防ぐように働く可能性が示唆された。研究グループは本報告を「女性関連要因と認知機能障害との関連を明らかにした初めての研究」としており、「女性関連要因は時代や社会的背景などで変化することから、今後も研究の蓄積が必要」とまとめている。
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