家屋が全壊した被災者は、長期にわたり心血管疾患リスクが上昇 東日本大震災の追跡研究

東日本大震災のために津波で家屋が全壊した被災者は、2年半が経過した時点でもメタボリックシンドロームなどの心血管疾患リスクの悪化が続いていることが分かった。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院社会行動科学科の芝孝一郎氏らが行った震災後追跡研究によるもので、「American Journal of Epidemiology」6月号に掲載された。

 調査対象となったのは宮城県岩沼市の65歳以上の高齢者。同地区では、震災発生前の2010年8月に「日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study)」プロジェクトの一環として社会調査が実施されていた(回答者5,058人、回答率59.0%)。そして震災後の2013 年10月に追跡調査が行われ(3,594人、追跡率82.1%)、そのうち自治体の健康診断のデータを利用可能であった1,195人を解析対象とした。

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 被災状況を「家族・友人との死別体験の有無」と「津波による家屋被害状況」で把握し、健診データの変化との関係を分析した。家屋被害状況は、「全壊」「大規模半壊」「半壊」「一部損壊」「家屋被害なし」の5段階に分け、自治体から派遣されたスタッフが客観的に判定した。健診データからは、心血管疾患のリスク指標として、血圧、BMI、腹囲、中性脂肪値、HDL・LDL-コレステロール値を解析に用いた。

 結果をみると、家族・友人との死別体験の有無別では、心血管疾患リスク因子に有意な違いはみられなかった。一方で、家屋が全壊した被災者は心血管疾患リスクが上昇しており、統計的に有意な差がみられた。

 具体的には、家屋が全壊した被災者は家屋に被害がなかった人より、BMIの増加が0.81kg/m2多く(95%信頼区間:0.24-1.38)、腹囲も4.26cm多く増加していた(95%CI:1.12-7.41)。またHDL-コレステロール(善玉コレステロール)の変動の差は-4.77 mg/dL(95%CI:-7.96--1.58)で、震災前からの減少幅が家屋全壊被災者でより大きかった。なお、家屋全壊ではなく、より軽度の家屋被害は、これらリスクの変化と統計的有意な関連はみられなかった。

 これまで、自然災害の直後(数日から数週間)、血圧上昇や脳卒中の増加が観察されたとする報告は複数なされているが、被災後の長期的な健康への影響はよく知られていなかった。本研究から、大災害ではその被災後 2 年半が経過した後にも心血管疾患リスク亢進状態が持続していることが明らかになり、自然災害被災者への長期的な健康支援が必要であることが示唆された。

 芝氏は論文中でも、「家を失った被災者の健康を維持するため、健康診断と支援の継続が考慮されるべき」と述べている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2019年7月22日
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