長時間労働は若年2型糖尿病患者の血糖管理に悪影響 朝食摂取や夕食の時間帯も影響か

若年男性の2型糖尿病患者では、週60時間を超える長時間労働と朝食を抜いたり、夜遅い時間帯に夕食を取るといった不健康な食習慣は血糖コントロール不良をもたらす可能性のあることが、金沢城北病院(石川県)内科の莇也寸志氏らの研究グループの調査で分かった。

調査では、40歳以下の若い2型糖尿病患者の血糖コントロールに影響する労働環境や生活習慣因子には性差がみられることも明らかになった。
詳細は「Journal of Diabetes Investigation」4月17日オンライン版に掲載された。

長時間労働や夜勤などの労働環境は、2型糖尿病の発症リスクに関与するほか、2型糖尿病患者の血糖コントロールに悪影響を及ぼす可能性が指摘されているが、日本人では十分に検討されていない。

また、これまでの国内外の複数の研究で、朝食を抜いたり、夜遅い時間帯に夕食を取るといった食習慣と糖尿病の発症や糖尿病患者の血糖コントロールとの関連が検討されているが、一致した見解は得られていない。

研究グループは今回、40歳以下の若年成人の2型糖尿病患者を対象に、労働条件(労働時間と職種、雇用形態、シフト勤務)と不健康な生活習慣(朝食を抜く、遅い時間帯に夕食を取る)が血糖コントロール状況に及ぼす影響について調べる前向き研究を実施した。

対象は、2011~2013年に96カ所の病院や診療所に通院する20~40歳の外来2型糖尿病患者782人のうち、仕事に就いていない人や学生などを除いた478人(男性352人、女性126人)。
対象患者を1年後(2013年)のHbA1c値が7.0%未満を達成した血糖コントロール良好群(男性135人、女性44人)とそれ以外の血糖コントロール不良群(各217人、82人)に分けて、HbA1c値に影響する2012年の労働条件および食習慣因子について検討を行った。

その結果、多変量ロジスティック回帰分析により、男性の勤労者では10年を超える糖尿病の罹病期間(オッズ比2.43)と2012年度のHbA1c値7%超(同8.5)、朝食を抜くと同時に遅い時間帯の夕食を取る習慣(同2.50)、週に60時間を超える労働時間(同2.92)が血糖コントロール不良と関連する因子として浮かび上がった。

一方で、女性の勤労者では、2012年度のHbA1c値7%超(同17.96)は男性と同様に血糖コントロール不良と関連したが、長時間労働や不健康な食習慣との関連はみられず、それ以外には経口血糖降下薬の服用(同12.49)とインスリン治療(同11.60)が挙げられ、血糖コントロールに関連する因子には性差がみられた。

以上の結果を踏まえて、研究グループは「若年男性の2型糖尿病患者では、週60時間を超える長時間労働や朝食を抜く、遅い時間帯に夕食を取るといった食習慣は血糖コントロール状況に悪影響を与える可能性がある」と結論づけている。

また、「血糖値を正常に保つためには、食習慣を改善し、長時間労働を抑制するよう心掛ける必要がある。日本では社会経済的な格差が広がる中、2型糖尿病の発症や進行、管理において労働条件や職場環境がどのように影響するのか、さらに検討を重ねていくことが求められる」との見解を述べている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2018年5月14日
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