CKD患者ではBMI低値が感染症や全死亡と関連

慢性腎臓病(CKD)患者ではBMIが低いことが感染症による死亡や全死亡のリスクの高さと関連するとの報告が、「BMC Nephrology」6月30日オンライン版に掲載された。仙台市立病院内科の山本多恵氏(研究時点の所属は東北大学大学院医学研究科腎・高血圧・内分泌科)らが、CKD患者を対象とした前向き観察コホート研究「艮陵研究」のデータを解析した結果、明らかになった。

 BMIが高いことは、一般的には心血管疾患や腎疾患の発症率の高さと関連している。しかし、CKD患者ではむしろBMIが高いほうが死亡リスクは低いとする報告があり、BMI低値は予後不良のリスクと捉えられている。また、CKD患者の死因として心血管死以外では感染症関連死が多いことが知られている。ただし、感染症関連死とBMIの関連は明らかでなかった。

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 山本氏らが解析に用いた艮陵研究は、宮城県を中心とする腎臓専門医所属医療機関11施設で行われており、登録患者数は4,015人。その中から、データに欠落のある患者などを除き、2,648人を今回の研究の対象とした。BMIの四分位で4群に群分けして前向きに5年間(中央値3.9年)追跡。全死亡および末期腎不全への進行をエンドポイントとし、それらの発生率と、死因別に関連因子を解析した。死因のうち感染症関連死は、肺炎、インフルエンザ、敗血症などによるものを集計した。

 対象者の主な背景は、年齢中央値63歳、男性53.5%で、eGFRは中央値53.4mL/分/1.73m2、BMIは男性23.8±3.5、女性23.1±4.1。追跡期間中に、114人が死亡し、308人が末期腎不全に進行した。

 全死亡リスクはBMI低値群で高いという有意な関連が認められた(P=0.0014)。一方の末期腎不全への進行については、BMIカテゴリーとの関連は認められなかった。なお、最も多い死因は心血管疾患(41%)で、感染症(21%)、がん(19%)と続いた。心血管死とがん死は全世代で見られたが、感染症関連死は65歳以上のみで見られ、その25%が前期高齢者、75%が後期高齢者だった。

 年齢、性別、血清アルブミン、喫煙、糖尿病、心血管疾患の既往、血圧、CKDステージなどで調整後、BMI低値群の全死亡リスクはハザード比(HR)1.26(95%信頼区間1.04~1.52)で、有意なリスク因子であることが分かった。末期腎不全への進行はHR1.03(同0.92~1.15)であり、BMI低値は有意な因子ではなかった。多変量解析の結果、全死亡と関連する因子としてBMI低値以外に、高齢、喫煙、心血管疾患の既往、血圧低値が抽出された。

 死因別に見ると、高齢であることは、心血管死、感染症関連死、がん死の全てにおいて有意な関連因子だった。BMI低値は感染症関連死と有意な関連が認められたが〔HR1.56(同1.05~2.33)〕、心血管死やがん死との関連は有意でなかった。このほか、カプランマイヤー法により、BMI低値による死亡リスクへの影響は、後期高齢者と血清アルブミン4g/dL未満の群でより大きくなることが明らかになった。

 これら一連の結果から研究グループでは、「CKD患者においてBMI低値は、全死亡と感染症関連死の独立した重大なリスク因子。感染症予防がCKD患者の転帰改善に寄与する可能性がある」とまとめている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2020年7月20日
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