厳格に管理された関節リウマチは骨粗鬆症のリスクではない

 治療介入で疾患活動性が抑制された関節リウマチ患者の骨粗鬆症リスクは、関節リウマチでない群と同レベルであるとする論文が、「Osteoporosis and Sarcopenia」6月号に掲載された。吉井病院院長の吉井一郎氏らが同院の患者を対象として検討した結果、明らかになった。

 関節リウマチは骨粗鬆症の独立したリスク因子であり、治療のためのステロイド薬もそのリスクを高める。一方、近年では発症後早期から生物学的製剤などで疾患活動性を積極的に抑制するとともに、ステロイド使用量を抑えるように変わってきている。吉井氏は、このような治療法の変化によって、関節リウマチが骨粗鬆症のリスク因子でなくなりつつあるのではないかとの仮説を立て、傾向性スコアを用いた統計的検討を行った。

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 2017年9月~2019年8月にDXA法にて骨密度測定を施行した741人の患者を、リウマチ群(332人)と非リウマチ群(409人)に分類。さらにリウマチ群については、治療開始から6カ月以内にDAS28-CRPが2.3未満になり臨床的寛解に到達した群(279人)と、寛解に至らなかった群(53人)に分類した。

 対象者全体の平均年齢は79.2±10.2歳で、男性が9.7%、BMI21.9±10.2、ステロイド使用歴のある患者が30.8%を占め、ステロイド継続使用中が5.7%であった。脆弱性骨折の既往は30.1%で、骨粗鬆症薬が70.4%に処方されていた。筋肉量の指標である血清クレアチニン/シスタチンC比は0.661±0.134で、併存疾患数は平均11.4±6.2だった。

 まず、リウマチ寛解群と非リウマチ群を比較すると、年齢や脆弱性骨折の既往者率は非リウマチ群の方が高く、反対に、ステロイド処方率、骨密度はリウマチ寛解群の方が高く、併存疾患数はリウマチ寛解群が多いという有意差があった。男女比、骨粗鬆症薬の処方率、血清クレアチニン/シスタチンC比は群間差がなかった。非リウマチ群におけるステロイド使用例は、全身性エリテマトーデス、巨細胞性動脈炎などの患者だった。

 次に、傾向性スコアにより背景因子を調整するマッチングを施行。リウマチ寛解群から107人、非リウマチ群から108人を抽出した。この2群間に、年齢やステロイド処方率、併存疾患数をはじめ、評価した因子に偏りはなかった。

 続いて、この2群の骨密度を部位別に比較すると、腰椎ではリウマチ寛解群0.994±0.179g/cm2、非リウマチ群0.960±0.235 g/cm2、大腿骨頸部では同順に0.690±0.122g/cm2、0.666±0.141 g/cm2であり、その他、大転子などの全ての測定部位において有意差を認めなかった。これにより、疾患活動性が十分にコントロールされた関節リウマチ患者では、骨密度低下の相対リスクは高くないことが示唆された。

 なお、傾向性スコアでマッチングさせた後のリウマチ寛解群と、非寛解群を比較すると、寛解群では女性が多く、脆弱性骨折の既往は非寛解群で多いという有意差が見られた。また、年齢と性別で調整後、測定した全ての部位の骨密度は寛解群が有意に高く、ADLの指標であるバーサルインデックスも寛解群の方が有意に高かった。

 吉井氏は、「関節リウマチに対するT2T(トリート・トゥ・ターゲット)戦略は治療のパラダイムシフトを起こした。T2Tによって炎症が抑制されている限り、骨密度低下も抑制され、ADLの維持につながる」と結論づけている。

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HealthDay News 2020年8月17日
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