胃薬「プロトンポンプ阻害薬」による認知症リスク上昇は認められず

プロトンポンプ阻害薬(PPI)は胃酸の分泌を抑える作用があり、胃潰瘍や逆流性食道炎などの治療薬として広く使用されているが、近年、PPIの使用で高齢者の認知症リスクが高まる可能性があるとする研究結果が報告され、不安が広がっていた。しかし、米エモリー大学のFelicia Goldstein氏らが実施した最新の研究で、PPIによる認知症リスクの上昇は認められないことが分かった。詳細は「Journal of the American Geriatrics Society」6月7日オンライン版に掲載された。

 以前の研究で、PPIの使用が75歳以上の高齢者の認知症およびアルツハイマー病のリスクを高める可能性があるとする結果が報告された。PPIは高齢者にも使用されることが多いため、この報告をきっかけに懸念が広がっていた。

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 Goldstein氏らは今回、米国内のアルツハイマー病研究施設33カ所で登録された、ベースライン時に認知機能が正常または軽度認知障害(MCI)がある50歳以上の米国人1万486人を対象とした前向き観察研究を実施。オメプラゾールやエソメプラゾール、ランソプラゾールなどのPPIの使用による認知機能への影響について検討した。対象者のうちPPIの日常的な使用者は8.4%、断続的な使用者は18.4%、観察期間中に一度も使用していない未使用者は73.2%だった。

 年齢や性、併存疾患などの因子を調整した解析の結果、PPIの日常的な使用者では、未使用者と比べて認知機能低下リスクが低いことが示された(ハザード比0.78、95%信頼区間0.66~0.93、P=0.005)。また、PPIの断続的な使用者でも、未使用者と比べて認知機能低下リスクが低かった(同0.84、0.76~0.93、P=0.001)。同様に、MCIまたは認知症の発症リスクも、PPIの日常的な使用者(同0.82、0.69~0.98、P=0.03)および断続的な使用者(同0.82、0.74~0.91、P=0.001)で低いことが分かった。

 以上から、Goldstein氏らは「最近の研究ではPPIの使用が認知症およびアルツハイマー病のリスク増大に関連すると報告されているが、それを裏付ける結果は得られなかった」と結論づけている。

 ただし、今回の研究では、PPIの使用者は未使用者に比べて年齢が高く、ベースライン時の心血管疾患やうつ病、糖尿病、高血圧、脳卒中などの有病率が高いという特徴がみられた。これらの因子は解析時には調整されているが、「PPIの使用者は心血管疾患リスク因子が多く、そのためにより多くのケアを受けており、その結果として認知症リスクが低下したという可能性もある」と、同氏らは考察している。

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HealthDay News 2017年6月28日
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