前向きな気持ちがアレルギーを改善するメカニズム

 アレルギー疾患の症状は、気持ちが前向きなときは軽快することが、その詳しいメカニズムとともに明らかになった。脳内の「ドパミン報酬系」が活性化すると、アレルギー反応が抑制されるのだという。山梨大学医学部免疫学講座の中尾篤人氏らの研究によるもので、詳細は「Allergy」6月13日オンライン版に掲載された。

 花粉症や気管支喘息、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患は、精神的なストレスにより症状が悪化することが知られている。その一方で、アレルギー疾患に対する新薬の臨床試験では、プラセボ効果(有効成分のない薬剤であってもそうと知らずに飲んだ際に、暗示などで生じる効果)が強く現れて、新薬の評価が困難になることも少なくない。

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 このように、アレルギーの症状は精神的な影響を受けることは、経験的、疫学的に分かっていた。しかし、なぜ精神的状態によって症状が変わるのかは明らかにされていなかった。中尾氏らは、さまざまな精神的状態の中でもプラセボ効果との関係が深い「前向きな感情(やる気)」を司る脳内の特定部位が、アレルギーに与える影響について検討した。

 前向きな感情は、脳内のドパミン報酬系という神経ネットワークが司っている。そこで、マウスを用い、このドパミン報酬系を以下の三つの方法で活性化し、アレルギー反応への影響を検討した。

 まず行ったのは、マウスのドパミン報酬系を人為的に直接活性化する方法。これには、DREADD(designer receptor exclusively activated by designer drugs)と呼ばれる脳の一部分のみを変化させる新しい技術を用いた。マウスを2群に分け、一方の群にはドパミン報酬系の中心的な部位である中脳腹側被蓋野という部分を、DREADDによって活性化させた。もう一方の群はこの処置を加えない対照群とした。5週間後、アレルギー反応を引き起こす免疫グロブリンE(IgE)を注射し、蕁麻疹様の皮膚症状が現れた面積を比較したところ、中脳腹側被蓋野を活性化させたマウスでは、対照群に比べて有意にその面積が小さかった。

 2番目の方法は、マウスの脳内報酬系を自然なかたちで活性化させる方法。これには、人工甘味料のサッカリンを用いた。2群に分けたマウスの一方の飲水ボトルにサッカリンを混ぜておき、飼育中のマウスが自発的に水を飲むたびに、その「甘味」によって中脳腹側被蓋野が活性化するようにした。もう一方の群には水を与えた。その後、1番目の実験と同様の方法でアレルギー反応を引き起こし、蕁麻疹様症状の範囲を比較したところ、サッカリンを混ぜた水で飼育したマウスは、対照群に比べて有意にその面積が小さかった。

 最後は薬によってマウスの脳内報酬系を活性化させる方法を試みた。これには、ドパミンの前駆体のL-ドパを用いた。L-ドパはパーキンソン病の治療にも使われており、脳内でドパミンに変換される。2群に分けたマウスの一方のみにL-ドパを注射し、前述と同様の手法で蕁麻疹様症状の範囲を比較したところ、L-ドパを注射したマウスは、対照群と比べて有意にその面積が小さかった。

 この結果について研究グループは、「前向きな精神状態を生み出す特定の脳内ネットワークが、アレルギーを生じる免疫のしくみと密接にリンクしていることを直接的に証明した世界で初めての知見」としている。そして「脳内ドパミン報酬系の活性化にアレルギー反応を抑える効果のあることが示された」と結論づけるとともに、「現在のアレルギー疾患の治療は投薬が中心だが、患者に前向きな気持ちを保ち続けてもらうよう、コミュニケーションを図ることも大切であることが示唆された」と付け加えている。

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参考情報:リンク先1リンク先2
HealthDay News 2020年7月13日
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