日本人高度肥満症患者のアルブミン尿改善には内科治療か外科治療か?

 高度肥満症患者のアルブミン尿改善効果を内科治療と減量・代謝改善手術(以下、外科治療)とで比較した研究結果が報告された。外科治療の方が減量や代謝改善効果に優れているものの、アルブミン尿の改善に独立して関連する因子は達成された減量幅のみであり、介入法の違いは関連がないとのことだ。東邦大学医療センター佐倉病院糖尿病・内分泌・代謝センターの渡邉康弘氏らの研究によるもので、詳細は「Obesity Facts」に10月14日掲載された。

 肥満は腎機能低下の独立したリスク因子であり、腎機能の低下は、肥満に伴う心血管イベントリスクをより上昇させる。一方、アルブミン尿は腎機能低下や心血管イベントのマーカーであり、肥満者の減量に伴ってアルブミン尿が改善することも知られている。また海外からは、肥満症治療としての内科的介入よりも外科治療の方がアルブミン尿改善効果に優れているとの報告がある。ただし、その結果が日本人にも当てはまるかは不明であった。渡邉氏らは、同院の高度肥満症患者の臨床データを遡及的に解析し、この点を検討した。

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 解析の対象は、2010年7月~2018年1月に同院で肥満症に対する治療を受け、少なくとも12カ月以上追跡が可能だったBMI35以上の高度肥満症患者、連続340人。そのうち98人が腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(LSG)を受け、242人は内科治療が継続されていた。内科治療としては、20~25kcal/kg標準体重/日の食事療法の指導とHbA1c7%未満を目標とした薬物治療が行われ、LSG群も手術前後にわたって同様に管理されていた。ベースライン時点では、年齢、BMI、HbA1c、糖尿病・高血圧・脂質異常症の有病率は同等であり、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)も内科治療群15.3mg/gCr、LSG群10.1mg/gCrで有意差がなかった(P=0.074)。

 介入から12カ月時点および36カ月時点で効果を比較検討した。なお、12カ月時点では両群ともに全員が継続通院しており、36カ月後まで追跡可能だったのは内科治療群111人、LSG群56人。

 介入12カ月時点で両群ともに体重、BMI、HbA1cなどが有意に改善していたが、改善幅はLSG群の方が有意に大きかった。ベースライン時の体重に対する減量幅(%total weight loss;%TWL)は、内科治療群6.4±9.9%、LSG群28.6±10.5%だった(P=0.000)。UACRの増減(ΔUACR)については、内科治療群では128.2±714.1mg/gCrと増加していたが、LSG群では-28.2±146.7mg/gCrであり有意な変化はなく、群間差が有意だった(P=0.003)。

 介入36カ月時点でも、両群ともに体重、BMI、HbA1cが有意に改善した状態が維持されていたが、改善幅はやはりLSG群の方が有意に大きかった。ΔUACRは、内科治療群137.6±730.7mg/gCr、LSG群-31.5±144.2mg/gCrであり、引き続き群間差が有意だった(P=0.034)。さらにUACRを対数変換して検討した値の増減(ΔLogUACR)で比較すると、同順に1.3±1.5、-0.4±0.9であり、LSG群では有意な改善が認められた(対ベースラインP<0.05、群間差P=0.000)。

 次に、ベースライン時点で微量アルブミン尿または顕性アルブミン尿が認められた患者のデータを用いて、介入12カ月後のΔLogUACR低下と関連する因子を検討した。すると、単変量解析ではベースライン時の体重に対する減量幅(%TWL)と介入方法の違いの2項目が特定され、eGFRやHbA1c、血圧などは有意でなかった。

 続いて重回帰分析を施行した結果、%TWLのみがアルブミン尿の改善に独立して関連する因子として抽出された(β=-0.460、P=0.004)。これにより、高度肥満症患者に対する減量戦略として内科治療またはLSGのいずれを採用するかにかかわらず、達成された減量幅がアルブミン尿の改善に重要であることが明らかになった。ROC解析により、12カ月時点でのUACR改善を予測する%TWLの最適なカットオフ値は7.8%であることが分かった(感度60.8%、特異度71.8%、AUC:0.658)。なお、LSG群の96%の患者が7.8%の体重減少を得られたのに対し、内科治療群ではわずか38%であった。

 著者らは本研究には、単施設での検討であること、アルブミン尿の出現や改善に影響を及ぼし得るRAS系薬剤の影響を考慮していないことなどの限界点があるとした上で、「日本人の高度肥満症患者では、内科治療のみを継続するとアルブミン尿が経過とともに増加することがあり、アルブミン尿の改善には外科治療の方が効果的な可能性がある。ただし、アルブミン尿の改善効果は介入方法の違いではなく、減量効果に依存する」と結論付けている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2021年11月22日
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