肥満合併で日本人2型糖尿病患者の医療費が増大 滋賀医大の研究グループ

肥満を伴う日本人の2型糖尿病患者は、肥満がない場合と比べて外来での薬剤費と入院費が増えることで医療費が増大することが滋賀医科大学糖尿病内分泌・腎臓内科准教授の荒木信一氏らの検討で分かった。

肥満を合併すると血糖や血圧、脂質コントロールに処方される治療薬の種類が増え、より手厚い治療が必要となるにもかかわらず、血糖コントロールが不十分なケースが多くみられたという。
詳細は「Journal of Diabetes Investigation」10月25日オンライン版に掲載された。

糖尿病と肥満は公衆衛生や健康上の問題だけでなく、社会経済的にも大きな負荷をかけることが懸念されている。
しかし、欧米人に比べて比較的やせ型が多い日本人の2型糖尿病患者では、肥満が血糖コントロールや治療内容、医療費にどのような影響を及ぼすのかは明らかにされていなかった。
荒木氏らは今回、2型糖尿病患者を対象に肥満が薬物治療や年間の医療費に与える影響を調べるため横断研究を行った。

対象は同大学で行われている前向き観察研究に参加し、2011年4月~2013年3月に経過観察のため外来を受診した2型糖尿病患者402人。
平均年齢は66歳、約66%が男性で、BMIは平均で24.7であった。

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対象患者をBMIが25以上の肥満群(165人;41%)と肥満がない群(237人)に分けて年間の医療費と血糖・血圧・脂質コントロールに要した薬物治療の内容を比較検討した。
なお、BMIが30以上の極端な肥満は35人(8.7%)にみられた。

その結果、肥満がない群と比べて肥満群は年齢が若く、ウエスト周囲長やHbA1c値、収縮期血圧値、総コレステロールや中性脂肪(トリグリセリド)の値(いずれも平均値)のほか高血圧の合併率が高かった。

対象患者全体の年間総医療費の中央値は26万9,333円であった。
年間の総医療費は肥満群では肥満がない群と比べて有意に高かった(29万4,548円対25万2,263円、P<0.001)。

特に肥満群では血糖や高血圧、脂質異常症の薬物治療にかかる費用と入院費が有意に高かった。

さらに、肥満群では肥満がない群と比べて血糖降下薬および降圧薬の平均併用数が有意に多く(それぞれ2.0対1.6、1.6対1.1、いずれもP<0.001)、3剤以上の併用を必要とする患者の割合も高かった。

以上の結果から、荒木氏らは「肥満を伴う日本人2型糖尿病患者では、主に薬剤費や入院費が増えることで医療費が増大するほか、必要とする治療薬の種類が増えるにもかかわらず血糖や血圧、脂質コントロールは不良であることが分かった。
今後、過体重や肥満の2型糖尿病患者では減量が医療費の抑制や必要とする治療薬の減少に有用かどうかを検討する必要がある」と述べている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2017年10月6日
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