残業が月61~80時間の男性はまるでランナーズハイ?――東京医大

2015年から始まったストレスチェック制度で収集されたデータを解析した結果、残業時間が長いほど疲労や不安、いらいら感、抑うつ感などが強いことが明らかになった。しかし意外にも男性においては残業時間が長い人の方が、活気の低下が少ない(より活気がある)という関係が認められた。詳細は「PLOS ONE」3月3日オンライン版に掲載された。
東京医科大学公衆衛生学分野の小田切優子氏、菊池宏幸氏らは、公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンターと共同で、残業時間とストレス反応の関係を検討した。検討対象は、2015年12月~2016年11月にストレスチェックを行った223社、9万5,004人のデータから従業員50人未満の事業所、パートタイム従業員、シフト勤務者、およびデータ二次利用拒否者を除いた117社、5万9,201人。ストレス反応の評価には、ストレスチェック推奨プロトコルに則し「職業性ストレス簡易調査票」のスコアを用いた。対象者の平均年齢は44.3±10.7歳、69.1%が男性、1カ月の平均残業時間は26.3±20.5時間だった。

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残業時間が20時間以下の人を基準とし、性別、年齢、職種、職務階級、雇用形態(正規か非正規か)、勤務時間(フレックスか否か)、企業規模、業種などの違いを調整した上でストレス反応を比較。すると、抑うつ感、疲労感、不安感、いらいら感、身体愁訴という5項目は、残業時間が長いほど強いという有意な関係が認められた。中でも疲労感は残業時間との関連が強く、21~30時間の残業でスコアが1.20倍、31~40時間で1.32倍、41~50時間で1.41倍、51~60時間で1.46倍、61~70時間で1.53倍、71~80時間で1.61倍、81時間以上では1.73倍だった。
その一方で、活気の低下に関しては残業時間が長い人ほどスコアが低く、他のストレス反応との相違が認められた。特に、残業が61~70時間の人のスコアは、20時間以下の人の0.89倍、71~80時間では0.87倍で、有意に低かった。
性別に解析すると、女性は男性よりも長時間労働によるストレス反応が強い傾向が見られた。また、残業時間が長いことと活気低下スコアが低いという関係は、女性では認められなかった。
これらの結果について著者らは、「予測されたとおり長時間労働者はストレス反応が強いことが確認された」とした上で、その関連のメカニズムについて、労働時間が長いことによる負荷の増大に加え、労働後のリフレッシュのための時間が不十分になることや、睡眠時間の短縮や睡眠の質の低下が関係している可能性を考察している。
また、残業時間が61~80時間の男性が、疲労感を感じながらも活気が高いという結果に関しては、そのような男性はマラソンランナーに見られる陶酔感のような「ランナーズハイ」に近い状態になっているのではないかと推測。「その状態で仕事への過剰な傾注が続くと、いずれ心血管疾患やうつ病などのリスクが高まると考えられるため注意が必要」と述べている。

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