メタボの人は食事の量ではなく、摂食行動に問題――佐久コホート研究

 メタボリックシンドローム(MetS)の人は、食べ過ぎではなく、食事の食べ方(摂食行動)に問題がある可能性が明らかになった。三重大学大学院医学系研究科公衆衛生・産業医学分野の森田明美氏らが、長野県佐久市で行われている住民対象コホート研究「佐久健康長寿プロジェクト」のベースラインデータを解析した結果であり、詳細は「Journal of Physiological Anthropology」に12月14日掲載された。

 解析の対象は、2009年5月~2013年3月に佐久総合病院人間ドックで健診を受け、研究参加に同意した成人4,446人(男性2,602人、女性1,844人)。平均年齢は男性59.2歳、女性58.4歳で、BMIは同順に23.7、22.3であり、MetS該当者率は20.6%と6.1%だった。

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 食事摂取量は自記式質問票の回答から摂取エネルギー量と栄養バランスを把握し、摂食行動は日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン」に取り上げられている食行動質問票で評価した。この食行動質問票は、食べる速度、欠食や夜食を取る頻度などに関する55項目の質問で構成されている。その回答を基に摂食行動を7種類のカテゴリー(食動機、代理摂食、食事内容、食生活の規則性など)のスコアとその合計で把握するもので、スコアが高いほど非健康的な摂食行動と判定される。

 対象者全体をMetSの有無で二分してエネルギー摂取量を比較すると、男性はMetSのある群が2,350±694kcal/日、MetSのない群が2,387±680kcal/日、女性は同順に1,880±519kcal/日、1,937±514kcal/日で、いずれも有意な群間差が認められなかった。年齢と摂取エネルギー量で調整した場合は、男性・女性ともに、複数の栄養素の摂取量が、MetSのない群で有意に多かった。

 摂取している食品群を比較すると、男性ではMetSのない群の方が、穀物、豆・大豆製品、緑黄色野菜、肉類、牛乳・乳製品、菓子を有意に多く摂取しており、一方で嗜好飲料はMetSのある群の方が有意に多く摂取していた。年齢と摂取エネルギー量で調整後、穀物に関しては有意差が消失したが、穀物以外については引き続き有意差が存在した。女性に関しては、年齢と摂取エネルギー量で調整後、MetSのある群の方が穀物の摂取量が有意に多い反面、芋類の摂取量はMetSのない群の方が有意に多かった。

 次に、摂食行動とMetSの関連をみると、7種類それぞれのカテゴリーとその合計スコアが、男性・女性ともにMetSのある群の方が有意に高かった。これにより、MetSのある人の摂取量はMetSのない人よりも高いとは言えないこと、その一方でMetSのある人は、摂食行動に問題があることが多い可能性が明らかになった。

 著者らはこの研究の限界点として、横断研究であるために因果関係には言及できないこと、喫煙・飲酒・身体活動習慣が考慮されていないこと、対象が健診受診者であるためにMetS該当者の割合が低い可能性があることを挙げている。その上で、「評価した全ての摂食行動のスコアが、MetSのない群よりもMetSのある群の方が明らかに悪かった。MetSは食事の『量』が多いために引き起こされるのではなく、食事スタイルの『質』に問題があることが示唆される」とまとめている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2021年1月18日
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