空腹時血糖異常と腹部肥満は糖尿病の強力な危険因子 日本人の成人男女で解析

日本人の成人男女はメタボリック症候群の危険因子の数が増えるほど将来、糖尿病になりやすく、特に空腹時血糖異常(IFG)があるとリスクはさらに高まる可能性のあることが医薬基盤・健康・栄養研究所(東京都)栄養疫学・食育研究部の黒谷佳代氏らの研究で分かった。

「Journal of Epidemiology」9月号に掲載されたこの研究では、保有する危険因子に腹部肥満が含まれると、危険因子の数は同じでも糖尿病リスクはより高まることも明らかにされた。

これまで欧米で行われた小規模研究では、メタボリック症候群を構成する危険因子のうちIFGと腹部肥満はその他の因子よりも糖尿病リスクと強く関連することが報告されている。
黒谷氏らは今回、日本の12企業で働く会社員10万人を対象とした職域多施設研究(Japan Epidemiology Collaboration on Occupational Health Study;J-ECOH Study)のデータを用いて、メタボリック症候群を構成する危険因子の数やその組み合わせと糖尿病リスクとの関連をIFGの有無別に調べる観察研究を行った。

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対象は、2008~2013年に定期健診を受診した11企業で働く会社員5万5,271人(うち男性が4万7,160人)。
メタボリック症候群を構成する危険因子は(1)ウエスト周囲長(男性90cm以上、女性80cm以上)、(2)中性脂肪150mg/dL以上または脂質異常症治療薬を服用、(3)HDL-コレステロール値が男性40mg/dL未満、女性50mg/dL未満、(4)血圧が130mmHgまたは85mmgHg以上あるいは降圧薬を服用、(5)空腹時血糖値が100mg/dL以上とし、(5)の空腹時血糖値が100~125mg/dLの場合をIFGと定義した。

追跡期間中(中央値で4.95年)、3,183人が糖尿病を発症した。
解析の結果、空腹時血糖値が正常な対象者では、危険因子がない場合と比べて糖尿病リスクは1個では2.0倍、2個では4.3倍、3個では7.0倍、4個では10.0倍にそれぞれ増加した。
また、IFGがあると糖尿病リスクはさらに高まり、IFGのみのでも12.7倍、IFGに加えて危険因子が1個増えると17.6倍、+2個で23.8倍、+3個で33.9倍、+4個で40.7倍にまでリスクが増加することも分かった。

さらに、危険因子(IFG、腹部肥満、高血圧、脂質異常症)の組み合わせ別に糖尿病リスクを比べたところ、危険因子に腹部肥満が含まれると、保有する危険因子の数がたとえ同じであってもさらに糖尿病リスクは増加することも明らかにされた。

以上の結果から、黒谷氏らは「メタボリック症候群の危険因子の数やIFGの有無で将来の糖尿病リスクを予測できる可能性がある。
また、保有する危険因子の数や血糖コントール状況が同じでも、腹部肥満があるかどうかで糖尿病リスクは変わってくることも分かった」と結論づけている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2017年10月16日
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