尿蛋白正常の慢性腎臓病は腎障害が進行しにくい可能性 東京医歯大グループ

尿試験紙検査で尿蛋白が正常の慢性腎臓病(CKD)患者は腎障害が進行しにくい可能性があると、東京医科歯科大学腎臓内科の飯盛聡一郎氏らが「PLOS ONE」1月17日オンライン版に発表した。

尿蛋白正常のCKD患者は、CKD病期が進行しても腎機能の低下速度は速まらず、心血管イベントの発生リスクや全死亡率にも病期間で有意な差は認められなかった。
そのため、腎臓内科専門医の治療下にある病期が進行したCKD患者であっても、その進行は顕在化しない可能性もあるという。

40歳以上の男女を対象とした特定健診(メタボ健診)などの一般健診では尿試験紙検査が行われているが、血清クレアチニン値は必須項目ではない。
しかし、20歳以上の一般成人集団約57万人を対象とした調査から、尿試験紙検査で蛋白尿が正常でも推算糸球体濾過量(eGFR)値が60mL/分/1.73m2未満に低下しているCKD患者は約1割存在するとの報告もある(Clin Exp Nephrol 2009; 13: 621-630)。

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飯盛氏らは、eGFRの低下と尿蛋白排泄量の増加は死亡リスクの上昇と腎アウトカムの悪化の指標とされているが、尿蛋白正常のCKD患者については一般健診ではCKDの進行が見過ごされている可能性に着目。
こうしたCKD患者を尿蛋白が正常か異常で分けてCKDの進行や予後を比較検討する前向きコホート研究を行った。

保存期CKD患者を対象とした治療法や予後に関する観察研究(Chronic Kidney Disease Research of Outcomes in Treatment and Epidemiology;CKD-ROUTE研究)に参加し、2010年10月~2011年12月に腎臓内科専門医の外来を初めて受診した病期G2~G5の20歳以上のCKD患者1,138人(eGFR 60mL/分/1.73m2未満で尿蛋白正常の患者は32.5%)のうち、6カ月間を超えて追跡し得た患者927人を解析対象とした。平均年齢は67歳、約7割が男性であった。
対象患者を尿試験紙検査の結果が(-)または(±)の尿蛋白正常群(352人)と(1+以上)だった尿蛋白異常群(575人)に分けて、CKDの進行(eGFRが50%以上低下あるいは透析導入)や心血管イベントの発生、全死亡を比較検討した。

中央値で35カ月の追跡期間中、全対象患者のうち223人にCKDの進行、110人に心血管イベントの発生、55人に全死亡が認められた。
多変量Cox比例ハザード解析の結果、尿蛋白正常群と比べて異常群ではCKDの進行リスクは有意に低かった(ハザード比0.20、95%信頼区間0.10~0.38)。

また、尿蛋白正常群ではCKDの原因として腎硬化症(59.7%)の頻度が最も高かった。
中央値で36カ月の追跡期間中、尿蛋白正常群では10人にCKDの進行、28人に心血管イベントの発生、18人に全死亡が認められた。
カプランマイヤー法を用いた解析の結果、CKDの病期でCKDの進行リスクや心血管イベントの発生リスクには有意な差は認められなかったが、全死亡リスクは病期が進行するほど高まった。
しかし、多変量Cox比例ハザード解析によると、これら3つのエンドポイントの発生率にCKD病期で有意な差はみられなかった。

以上の結果から、飯盛氏らは「尿試験紙検査で尿蛋白が正常だったCKD患者を約3年間追跡した結果、こうした患者ではCKD病期が進行した患者でも腎機能の低下速度は速まらず、CKD病期で心血管イベントの発生率や死亡率に有意な差は認められなかった」と説明している。
さらに、「この結果は、一般健診では尿蛋白が正常でもCKDが進行した患者が見逃されやすいこと、また、腎臓内科専門医の外来を初めて受診した尿蛋白正常のCKD患者では、病期が進行していても腎障害は進行しにくい可能性があることを示唆している」と結論づけている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2018年2月5日
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