ネット検索キーワードから見た一般市民と医療者の情報格差

 患者や一般市民が情報収集する際にネット検索する言葉と、医療者が常用する医学用語との差異を明らかにした研究結果が、「Journal of Medical Internet Research」4月13日オンライン版に掲載された。

 医学・医療情報の入手にインターネットはもはや不可欠。専門家が医療情報をかみ砕いて解説した一般向けサイトも多数存在する。それにも関わらず、一般市民が求める情報と医療専門家が重視する情報の差異について、十分には検討されていない。そこで京都大学大学院医学系研究科人間健康科の平和也氏(研究時点の所属は滋賀医科大学公衆衛生看護学講座)らは、インターネット検索サイトで用いられる単語を解析し、そのギャップを把握することを試みた。

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 平氏らの研究は、一般市民が情報収集に用いる検索サイト「Yahoo!検索」および質問サイト「Yahoo!知恵袋」で多用される語句と、医療関係者の臨床報告検索ログに頻出する語句、それぞれ上位100語を選び、その使用頻度の関連を検討するというもの。加えて、医療者はあまり用いないがネットで検索されることが多い語句についての質的検討を行った。

 まず、一般市民が「Yahoo!検索」で検索する語句と医療者の使用頻度が高い語句の関連を見ると、弱い有意な相関が認められた(r=0.290、P=0.003)。質的検討からは、糖尿病、高血圧、頭痛、貧血、腹痛、心不全、脳梗塞など、生活習慣病や日本人の死因の上位に入る疾患名は、両者で高頻度に使われていた。その一方、一般市民の検索件数が多く医療者の使用頻度が低い語句として、甲状腺機能異常、潰瘍性大腸炎、黄疸、心房細動、多発性骨髄腫、腎不全などが抽出された。

 一般市民が「Yahoo!知恵袋」で調べる語句と医療者の使用頻度が高い語句の関連も、弱い有意な相関が認められた(r=0.337、P=0.001)。質的検討で、頭痛、腹痛、下痢、嘔吐、貧血、糖尿病、発熱など、主に症状に関連する語句が、両者で高頻度に使われていた。一方、痛み、しびれ、微熱、潰瘍性大腸炎、腎不全などは一般市民が調べる頻度は高いものの、医療者の使用頻度は低かった。

 一般市民の「Yahoo!検索」の検索語句と「Yahoo!知恵袋」で使用される語句の間には、中等度の有意な相関が認められた(r=0.569、P<0.001)。頭痛、腰痛、下痢、腹痛、貧血、糖尿病などの語句は両者でよく使用されていた。検索される頻度は高いが質問サイトで使用される頻度は低い語句として、DIC(播種性血管内凝固症候群)、SLE(全身性エリテマトーデス)などが、検索頻度は低いが質問サイトで多用される語句として、痛み、しびれ、徘徊などが抽出された。

 一般市民の平均年齢は34.5歳で、女性が54.6%だった。検索ワードを年齢層別に見ると、40~50代では高血圧や異常陰影、60代では胃がん、肺がん、心房細動、間質性肺炎、肺炎球菌などが多く検索されていた。

 これらを踏まえ研究グループは、「医療者の使用頻度が高い語句と一般市民が用いる語句には弱い相関しか認められず、医療者の言葉は一般市民が使用する言葉と異なる可能性がある」としている。また一般市民の検索ワード上位に入った、潰瘍性大腸炎や甲状腺機能異常などが医療者間では使用頻度が低かったことに関連して、「これらの慢性疾患患者の情報収集ニーズは高いが、医療者側の優先度は低いようだ」と述べている。その上で「インターネットを通じて医療情報を提供する場合、このようなギャップを埋める配慮が必要」とまとめている。

 なお、検索ワードのうちアルファベットのみの語句は、同じ文字列を含む単語(例えばDICとdictionary、SLEとsleep)が検索された影響を除去しきれていないことは本研究の限界であり、解釈に注意が必要という。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2020年5月25日
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