血糖上昇を抑える新しいオリゴ糖をメープルシロップから発見――近畿大学

サトウカエデの樹液から作られるメープルシロップの中から新しいオリゴ糖が見つかった。ショ糖の分解酵素の働きを阻害し、血糖上昇を抑制する作用を持つという。近畿大学薬学部病態分子解析学研究室の多賀淳氏らの論文が「International Journal of Molecular Sciences」10月11日オンライン版に掲載された。

 新たに発見されたオリゴ糖は、天然甘味料のメープルシロップに含まれている「メープルビオース」。研究グループがサトウカエデの樹液の主な成分である糖質の分析を進めている過程で見つかった。このオリゴ糖は、スクロース(ショ糖。砂糖の主成分)をブドウ糖とフルクトースに分解するスクラーゼに強い親和性がありながら、核磁気共鳴法による検討の結果、それ自体は分解されにくい構造であることがわかった。

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 このような特徴は、糖の分解酵素の働きを阻害し、生体への糖吸収を抑制する作用を有することが多い。そこで研究グループでは、まず試験管内での実験を実施。その結果、メープルビオースはショ糖分解酵素であるインベルターゼの活性を40~65%、濃度依存的に阻害することがわかった。また、マルターゼやイソマルターゼなどのα-グルコシダーゼ類の活性も阻害することがわかった。

 次に、2型糖尿病のモデル動物であるOLETFラットを用いた生体内での実験を実施。14時間絶食させたOLETFラットにスクロース1.5g/kgを経口投与した場合と、スクロースにメープルビオースを1.62mg/kg添加し経口投与した場合とで、血糖値とインスリン値の反応を比較した。

 すると、経口投与から60、120、180分後の血糖値はメープルビオースを添加したときの方が有意に低く、血糖変動曲線下面積は約50%に抑制された。この結果は、スクロースの量に対し0.11%という微量のメープルビオースを追加するだけで、血糖値の上昇が約半分に抑えられることを意味する。一方、この実験においてインスリン値は有意差がなかった。

 インスリン値に影響を与えず血糖値の上昇が大きく抑制された理由について、著者らは、スクラーゼの阻害だけでなく、小腸での糖吸収阻害も関与している可能性を考察している。また、血糖降下薬のα-グルコシダーゼ薬や、糖の吸収を抑える特定保健用食品・機能性食品が、主にマルターゼやイソマルターゼを阻害するのに対し、メープルビオースはショ糖の分解酵素であるスクラーゼに対する阻害活性が強いことが特徴という。

 本研究は多賀氏らの近畿大学グループと、株式会社メープルファームズジャパンとの共同研究によって行われた。研究グループでは、「メープルシロップは昔から人が摂取してきた食品であり、副作用の心配が少ないと考えられる。ショ糖に微量を加えるだけで作用を発揮することから、砂糖の甘さを生かしながら糖吸収を抑えるスイーツなどの開発も期待できる。今後はメープルビオースの効率的な製造法の研究も進めたい」としている。

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HealthDay News 2019年12月16日
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