日常会話からアルツハイマー病を見つける新技術

アルツハイマー病の患者を日常会話から検出できる可能性のある新技術に関する報告が「JMIR Mental Health」1月12日オンライン版に掲載された。日本アイ・ビー・エム株式会社東京基礎研究所の山田康智氏らの研究によるもので、その識別力は90%以上に上るという。
アルツハイマー病をはじめとする認知症の症状が現れているにも関わらず、その診断を受けていない患者は少なくない。適切な治療やサポートがなされずに、患者本人と家族に負担が生じているケースもある。

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こうした背景から、高齢者に負担の少ない方法で日常生活を継続的にモニタリングし、認知症症状を検出する技術の開発が期待されている。山田氏らは、日常会話に現れる話の繰り返しを自動的に抽出・定量化することで、アルツハイマー病による症状の変化を検出可能との仮説を立て、電話による会話型見守りサービス(株式会社こころみ)で交わされた日常会話を分析した。
会話型見守りサービスは、トレーニングを受けたコミュニケーターが週に1~2回、利用者と電話で10~20分日常的な会話を行い、その内容が文字情報に書き起こされ、利用者とは別の場所で暮らす家族へメールで送られるサービス。今回の研究では、このサービスを利用した2人のアルツハイマー病患者を含む15人の高齢者(平均年齢76.8±9.4歳、うち女性12人)の会話データを分析した。分析対象データは、1人当たり平均16.1カ月にわたる68.8回分で、合計1,032回分の会話。
分析ではまず会話中の「単語」の繰り返し、および「トピック」の繰り返しをそれぞれ自然言語処理および機械学習技術を用いて定量化した。続いてそれらを、「1回の会話」内で繰り返されたケースと、「異なる2回の会話」間で繰り返されたケースに分けて調査。後者の2回の会話については、会話間の日数、および、会話間の回数でそれぞれ別に傾向を比較した。
検討の結果、「単語」「トピック」ともに、一定期間の日数をあけた2回の会話間における繰り返しの程度が、アルツハイマー病患者と健康な高齢者との間で最も大きく違っていた。特に、約7日間間隔があいた2つの会話間での「トピック」の繰り返しの程度を比較したときに識別力が最大となり、ROC解析による曲線下面積(AUC)は0.91に達した。また、先行研究で示されている「テキスト特徴量」による識別力と比較しても、一定期間あけたときの単語・トピックの繰り返しの程度による識別力の方が高かった。
これらの結果について山田氏らは、「アルツハイマー病患者では、イベント発生後の時間経過とともに、健常高齢者との記憶の差が大きくなると考えられる。本研究で示された日常会話の中での『話の繰り返し』も、その現象が顕在化したものと考えられる」と述べている。そして、「日常会話を継続的にモニタリングし、異なる日での話の繰り返しを自動的に定量化することで、アルツハイマー病の検出、あるいは早期発見に活用できるかもしれない」とまとめている。

軽度認知障害を予防し認知症への移行を防ぐためには早期発見、早期予防が重要なポイントとなります。そこで、今回は認知症や軽度認知障害(MCI)を早期発見できる認知度簡易セルフチェックをご紹介します。