糖尿病でなくてもHbA1cが高いと痛みに鈍くなる

糖尿病性神経障害は糖尿病の合併症だが、糖尿病ではなく血糖値が少し高いくらいであってもリスクになることが、日本人対象の研究で明らかになった。弘前大学大学院医学研究科分子病態病理学講座の水上浩哉氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Endocrinology」10月2日オンライン版に掲載された。

 糖尿病で最も早期に発症し頻度も高い合併症が、糖尿病性神経障害。進行すると、足や手に激しいしびれや痛みを生じたり、反対に痛みに鈍くなって潰瘍や下肢切断のリスクとなったりする。神経障害は血糖コントロールの指標であるHbA1cが高いほど起こりやすいが、糖尿病の診断基準には至らない程度のHbA1c上昇と神経障害発症の関係は、これまで明らかでなかった。

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 水上氏らは、青森県で2007年から実施されている「岩木健康増進プロジェクト」のうち2017年度登録者から糖尿病患者を除いた地域住民を対象に、HbA1cと足の疼痛閾値との関連を横断的に調査した。調査対象のうち894人が正常血糖、55人が空腹時血糖異常(IFG)に該当。正常血糖者はHbA1cにより、5.4%未満(低HbA1c群)、5.4~5.8%(中HbA1c群)、5.8%~6.4%(高HbA1c群)の3グループに群分けした。疼痛閾値は、足の短趾伸筋から流す電流を徐々に弱めていき、被験者が刺激を感じとれる最低強度で評価した。

 疼痛閾値を性・年齢別に検討すると、男性は平均0.15±0.01mAで年齢による差はなく、女性は0.14±0.01mAで50~60代はやや高かった。男女合計の平均は0.15±0.01 mAで、全体の95パーセンタイル値は0.16 mAであることから、0. 20 mA以上は痛覚の異常と見なされた。

 HbA1cレベル別に痛覚閾値を見ると、低HbA1c群0.13±0.01mA、中HbA1c群0.14±0.01mA、高HbA1c群0.18±0.01mA、IFG群0.20±0.03mAで、高HbA1c群とIFG群は他の2群に比べて有意に高く(P<0.01)、痛覚の低下が認められた。IFG群の35.3%は痛覚の異常に該当した。

 痛覚閾値の上昇と関連する因子として単回帰分析では、HbA1cのほかに年齢やBMI、高血圧、空腹時血糖、アキレス腱反射などが抽出されたが、重回帰分析ではHbA1cのみが有意な因子として残った(β=0.0784)。また、HbA1cが5.8%を上回る場合、痛覚閾値上昇の調整オッズ比が2.01であり、有意に高リスクとなることもわかった。なお、自覚症状に関しては、HbA1cレベルによる違いはみられなかった。

 以上より研究グループは、「HbA1cが正常域で自覚症状のない一般集団であっても正常高値HbA1cは痛覚閾値の上昇と有意に関連している。因果関係の確認には縦断調査が必要だが、HbA1cが基準値内でも高値の人は将来的な糖尿病性神経障害発症リスクが高いと考えられる」と結論づけている。

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糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。

糖尿病のセルフチェックに関連する基本情報

参考情報:リンク先
HealthDay News 2019年11月5日
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