多因子の管理目標達成により冠動脈疾患リスクが減少 糖尿病群と非糖尿病群で比較、新潟大研究グループ

血糖、血圧、脂質、喫煙習慣の管理目標を達成することで、糖尿病の有無にかかわらず、冠動脈疾患(CAD)の発症リスクが低下する可能性があることが、新潟大学血液・内分泌・代謝内科学特任准教授の藤原和哉氏らの研究で明らかになった。4つのリスク因子のうち2つの管理目標を達成すると、糖尿病群と非糖尿病群のいずれにおいてもCADリスクは大幅に低減することが分かった。詳細は「Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」4月17日オンライン版に掲載された。
2型糖尿病患者の多くは血糖、血圧、脂質など複数のリスク因子を抱えている。しかし、実臨床において、修正可能なリスク因子の全ての管理目標を達成することは極めて難しい。そこで、藤原氏らは今回、血圧、LDL-コレステロール(LDL-C)、HbA1cおよび喫煙習慣の多因子の管理目標を達成するとCADリスクが低下するのか否かを、糖尿病の有無別に検討するため、コホート研究を実施した。

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研究では、全国規模の診療報酬明細書データベースを用いて、2008~2013年のベースライン時にCADがなく、3年間以上追跡し得た計22万894人の会社員とその家族(18~72歳)を対象に、前向きに平均4.8年間追跡して分析した。対象者のうち糖尿病群は1万3,608人(平均年齢50.0±8.2歳)、非糖尿病群は20万7,286人(同44.0±8.5歳)であった。
両群ともに、2つの管理目標を達成した者の割合が最も高かった(糖尿病群では39.6%、非糖尿病群では36.4%)。分析の結果、糖尿病の有無に関係なく、2つのリスク因子の管理目標を達成した群と比べて、管理目標を1つのみ達成した群および1つも達成していない群では、CADリスクがそれぞれ2倍および4倍に上昇することが分かった。
また、修正可能な血圧、LDL-C、HbA1c、喫煙習慣の4つのリスク因子全ての管理目標を達成した糖尿病群では、血圧、LDL-C、喫煙習慣のうち2つの管理目標を達成した非糖尿病群と比べてCADリスクが上昇することはなかった。一方で、4つのリスク因子全ての管理目標を達成していない糖尿病群では、2つの管理目標を達成した非糖尿病群と比べてCADリスクが9.4倍に上昇していた。
これらの結果を踏まえ、藤原氏らは「糖尿病群と非糖尿病群のいずれにおいても、リスク因子の管理目標を達成することでCADリスクが低下することが分かった。また、糖尿病患者においても血糖、血圧、LDL-C、喫煙習慣の4つのリスク因子の管理目標を達成することで、CADリスクは、血圧、LDL-C、喫煙習慣のうち2つの管理目標を達成した非糖尿病群と同程度まで減少する可能性が示された」と結論づけている。

糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。