「住環境」と「外食頻度」が若年女性の栄養摂取状況に及ぼす影響は?- 日本人の女子学生約4,100人を解析

家族と同居またはひとり暮らしといった居住形態は、中高年だけでなく若年女性の食習慣にも影響を及ぼし、居住形態によって栄養素の摂取状況には差がみられることが、東京大学大学院社会予防疫学分野の児林聡美氏らの検討で分かった。また、ひとり暮らしの若年女性では、外食の頻度を減らしても必ずしも食事の改善にはつながらないことも示された。詳細は「Journal of Epidemiology」6月号に掲載された。
家族と同居あるいはひとり暮らしといった居住形態は、食習慣に影響を及ぼすと考えられている。特に中年や高齢者のひとり暮らしは、低栄養や不健康な食生活の危険因子であることが報告されている。児林氏らは今回、若年女性を対象に、家族と同居している女性とひとり暮らしをしている女性の普段の食事から摂取している栄養素の充足状況を比較し、さらに外食の頻度が食事の適切さに及ぼす影響についても調べた。
対象は、85校の栄養関連学科の学生とその母および祖母が参加した、食習慣と健康に関する女性3世代の横断観察研究の参加者うち18~20歳の女子学生4,107人。このうち3,096人(75.4%;同居群)が家族と同居しており、1,011人(24.6%;独居群)はひとり暮らしをしていた。
食事摂取量は自記式食事歴法質問票(DHQ)から推定し、「食事の適切さ」は「日本人の食事摂取基準(2015年版)」による基準値を用いて評価した。生活習慣病の予防のために目標量(DG)が設定されている5つの栄養素〔脂質、飽和脂肪酸(SFA)、炭水化物、食物繊維、食塩〕の場合はDG範囲外の摂取量を「不適切」とし、摂取不足の評価のために推定平均必要量(EAR)が設定されている13栄養素(たんぱく質、ビタミン、ナイアシン、葉酸、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、銅)の場合はEARに満たない摂取量の場合を「不適切」とした。なお、鉄に関しては海外の知見から基準値を設定した。
その結果、独居群では同居群に比べて、ほとんどの栄養素の摂取量が有意に低かったが、炭水化物だけは有意に高かった。また、DG設定栄養素の摂取量が「不適切」だった学生の割合は、脂質、SFAおよび食塩は同居群で高く、食物繊維は独居群で高かった。EAR設定栄養素の摂取量が「不適切」だった割合は、ほとんどの栄養素が独居群で高かった。同居群ではDGを満たしていない栄養素数が独居群に比べて高かったが(3.3対2.9)、EARを満たしていない栄養素数は低かった(6.0対7.1)。

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さらに、同居群では外食頻度が増えるに従い、DGを満たしていない栄養素数が増加した。一方で、独居群では外食頻度とDGまたはEARを満たす割合との間に関連はみられなかった。
以上の結果を踏まえて、児林氏らは「居住形態は若年女性の食習慣に影響を及ぼし、食習慣の改善点はその居住形態で異なることが分かった。また、外食の頻度を減らすことは、家族と同居する学生では食事の改善の一助となる可能性があるが、ひとり暮らしの学生では必ずしも改善につながらないことも示された」と結論。ひとり暮らしの学生に対して健康的な食習慣を啓発する必要性があることを指摘している。

保健機能食品には、食品の目的や機能等の違いにより。国が安全性や有効性を個別に審査し許可した「特定保健用食品(トクホ)」・国が定める特定の栄養成分の規格基準に適合した「栄養機能食品」・科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品である「機能性表示食品」の3つがあります。