肥満であるほど脳梗塞になりやすい? 約9万人の日本人男女を解析、JPHC研究

日本人は肥満であるほど脳梗塞になりやすい可能性があることが、国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの検討で分かった。特に、BMIが30を超える肥満であると、男性では心原性脳塞栓症リスクが、女性では心原性脳塞栓症だけでなく、ラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞リスクも約2倍に高まることが明らかになった。研究の詳細は「Journal of Epidemiology」2018年12月15日オンライン版に掲載された。

日本人が発症する脳卒中の約半数は脳梗塞が占めている。脳梗塞は「ラクナ梗塞」「アテローム血栓性脳梗塞」「心原性脳塞栓症」の3つの病型に分けられるが、病型別の発症リスクと肥満度との関連は不明な点が多い。研究グループは今回、JPHC研究に参加した40歳以上の男女約9万人を長期にわたり前向きに追跡したデータを用いて、肥満度と脳梗塞発症との関連について調べた。

脳梗塞に関する治験・臨床試験(新しい治療薬)情報はこちら
お近くの治験情報を全国から検索できます。

研究では、ベースライン時(1990年および1993~1994年)に全国9地域に在住し、研究開始から5年後および10年後の質問票調査に回答した40~69歳の8万8,756人(うち男性4万2,343人)を対象に、2011年まで追跡した。ベースライン時および5年後、10年後の調査で測定したBMIの累積平均値を算出し、脳梗塞発症との関連を検討した。

中央値で20年の追跡期間中に、男性では809人がラクナ梗塞を、395人がアテローム血栓性脳梗塞を、568人が心原性脳塞栓症を発症し、女性ではそれぞれ481人、218人、298人が発症した。ベースライン時の年齢や喫煙、飲酒の習慣、運動量、高血圧や脂質異常症、糖尿病の既往といった因子で調整した解析から、男性ではBMIが高いほど3つの病型の脳梗塞の発症リスクは高く(ラクナ梗塞:P=0.007、アテローム血栓性脳梗塞:P=0.002、心原性脳塞栓症:P<0.001)、一方、女性ではラクナ梗塞(P<0.001)とアテローム血栓性脳梗塞(P=0.003)のリスクが高いことが分かった。

また、男女ともBMIが23以上25未満の場合に比べて、BMIが30以上の人では心原性脳塞栓症リスクが約2倍であった(ハザード比は男性が2.14、女性が1.89)。さらに、BMIが30以上の女性では、ラクナ梗塞リスクが1.77倍、アテローム血栓性脳梗塞が1.9倍であることも示された。

以上の結果を踏まえ、研究グループは「この研究では、累積平均BMI値を用いて、肥満による脳梗塞への長期的な影響を評価した。その結果、BMIが適正な人に比べて、30を超える肥満であると男女とも心原性脳塞栓症リスクが約2倍であり、女性ではラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞のリスクも約2倍に高まることが分かった」と結論づけている。

治験に関する詳しい解説はこちら

治験・臨床試験は新しいお薬の開発に欠かせません。治験や疾患啓発の活動を通じてより多くの方に治験の理解を深めて頂く事を目指しています。治験について知る事で治験がより身近なものになるはずです。

治験・臨床試験についての詳しい説明

参考情報:リンク先リンク先2
HealthDay News 2019年1月21日
Copyright c 2019 HealthDay. All rights reserved.
SMTによる記事情報は、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。
病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください。
記載記事の無断転用は禁じます。