太っても食欲が止まらない・・・原因酵素を同定 肥満治療への応用に期待、基礎生物学研


食欲は通常、脂肪細胞から分泌されるホルモン(レプチン)がコントロールしているが、肥満になると脳の摂食中枢で「RPTPJ」と呼ばれる酵素の発現量が増え、レプチンの作用を弱めていることがマウスを用いた実験で分かった。
この酵素の働きの阻害は糖尿病や肥満の新しい治療標的となる可能性があるという。詳細は「Scientific Reports」9月14日オンライン版に掲載された。
一般に、肥満がない人の食欲は、脂肪細胞から分泌されるレプチンというホルモンが脳の摂食中枢に働きかけることで抑えられている。
しかし、肥満になると脂肪の増加に伴ってレプチンの分泌量が増えるにもかかわらず、この働きが弱まる「レプチン抵抗性」の状態になることが知られているが、どのようなメカニズムでレプチンが効きにくくなるのかは明らかにされていなかった。

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野田氏らの研究グループは今回、これまでさまざまな生理機能の研究を進めてきたRPTP(受容体様タンパク質チロシン脱リン酸化酵素)と呼ばれる酵素群のうち、2015年にインスリン受容体を脱リン酸化し、その働きを抑えていることを見出した「RPTPJ」に着目。
この酵素の遺伝子を欠損したマウスと正常なマウスに高脂肪食を12週間与えて観察したところ、RPTPJがないマウスは正常なマウスと比べて食べる量が少なく、体重も抑えられていたほか、全身の脂肪量が約4割少ないことも分かった。
また、高脂肪食を2カ月間与えたマウスでは、レプチン抵抗性とともに、摂食中枢でRPTPJの発現量が増えていることも分かった。
さらに、高脂肪食を14週間にわたり与えたマウスにレプチンを投与したところ、正常なマウスではレプチン抵抗性が引き起こされていて食べる量や体重は減らなかったが、RPTPJがないマウスではいずれも大きく減少し、レプチン抵抗性は生じていないことが明らかになった。
以上の結果を踏まえて、野田氏らは「RPTPJの働きを阻害する薬剤の開発は、糖尿病だけでなく肥満の新しい治療につながる可能性がある」と期待を示している。

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