オピオイド中毒死の激増で米国民の余命延長に暗雲

米国ではこの15年間に国民の平均余命は2年ほど伸びたが、ヘロインやオキシコドンといったオピオイド系鎮痛薬の過剰摂取を原因とした死亡率は3倍以上に上昇し、余命を縮める要因となりつつあることが米疾病対策センター(CDC)の研究グループによる研究で明らかになった。

詳細は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」9月19日号に掲載された。

今回の研究は、CDC国立傷害予防対策センター(NCICP)のDeborah Dowell氏らが米国の人口動態統計データを用いて実施したもの。
同氏らが2000年および2015年の死因別の死亡者数と死亡率を調べた結果、この間に心疾患やがんなどを原因とした死亡率の減少を背景として、平均余命は76.8年から78.8年に延長していた。

しかし、薬物やアルコールなどの中毒による死亡率(人口10万人当たり)は6.2人から16.3人に増加。中でもオピオイド中毒による死亡率(同)は3.0人から10.4人へと劇的に増加しており、これによって米国民の平均余命は2.5カ月間短縮したことが分かったという。

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米国では2002年から2016年にかけてオピオイド系鎮痛薬の1つであるヘロインの中毒による死亡者数が2,100人未満から1万3,200人超へと533%増加したことが最近、報告されたばかりだ。

このことから、今回もオピオイド中毒によって米国民の平均余命が短縮しているという研究結果が報告されたことに「驚きはない」と米コロンビア大学医療センター精神科学教授のAdam Bisaga氏は話す。

その上で、同氏は「オピオイド依存症には治療薬があるにもかかわらず、オピオイド中毒による死亡率が上昇し続けているのは悲劇だ」と指摘。
その要因として、依存症治療の知識がないために治療薬の使用を躊躇するプライマリケア医が多いことが背景にあるのではないかとの考えを示している。

ただ、米国立薬物乱用研究所(NIDA)によると2015年の医療用オピオイドやヘロインの乱用者数は200万人を超えている一方で、米国には依存症治療の専門医は約5,000人しかいないため、「プライマリケア医もオピオイド依存症の治療にかかわっていくべきだ」と同氏は強調している。

また、今回のDowell氏らによる研究では、2000年から2015年までにアルツハイマー病や事故、自殺、慢性肝疾患による死亡が増加したことも分かった。

さらに同氏によると、最近、2015年の米国民の平均余命は2014年と比べると短縮したことが報告されているという。
「今や米国民の平均余命は先進国の中でも下位に位置している。

オピオイド中毒だけが余命短縮の原因ではないが、平均余命を再び延長させるためには、オピオイドの過剰摂取による死亡を減らすための対策が重要なのは明らかだ」と同氏は話している。

なお、最近は医師が処方した医療用オピオイドに代わってヘロインや違法に製造された合成オピオイドが大きな問題となっているという。
医療用鎮痛薬の依存症患者がより安価で容易に入手できるストリートドラッグに手を出す場合もある。
NIDAによると、米国のヘロイン乱用者の約80%は医療用オピオイドの乱用をきっかけに依存症となっている患者だという。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2017年9月19日
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