左室心筋重量減少に有効な経口血糖降下薬とは? 2型糖尿病患者のRCTネットワークメタ解析

経口血糖降下薬のうちスルホニル尿素(SU)薬であるグリクラジドだけが、プラセボや他の血糖降下薬と比べて2型糖尿病患者の左室心筋重量(LVM)の減少に有効な可能性があることが、伊勢赤十字病院(三重県)糖尿病・代謝内科の井田諭氏らが実施したネットワークメタ解析の結果から示された。詳細は「Cardiovascular Diabetology」9月27日オンライン版に掲載された。
これまでの研究で、2型糖尿病患者はLVMが増大しやすく、LVMの増大は心不全などの心血管疾患や突然死などの独立した予測因子であることが報告されている。一方、経口の血糖降下薬によるLVMへの効果については、これまでの研究で一致した結果は得られていない。

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井田氏らは今回、2018年1月までに公表された、2型糖尿病患者を対象に経口血糖降下薬によるLVMへの有効性を検討したランダム化比較試験(RCT)論文を検索。基準を満たした11件のRCT(計1,410人が参加)を対象にネットワークメタ解析を実施した。解析対象患者の平均年齢は60.3歳で、女性が44.6%であった。
解析の結果、経口血糖降下薬のうちSU薬であるグリクラジドだけがプラセボと比べて有意にLVMを減少させることが分かった。また、経口血糖降下薬間でLVM減少効果を比較したところ、グリクラジドは他の薬剤〔同じくSU薬のglyburide(グリブリド、日本国内の一般名はグリベンクラミド)、α-グルコシダーゼ阻害薬のボグリボース、メトホルミン、チアゾリジン系薬のピオグリタゾン、rosigritazone(日本国内未発売)、DPP-4阻害薬のシタグリプチン〕と比べて唯一、LVMを減少させることが明らかになった。
以上の結果から、井田氏らは「今回の解析から、経口血糖降下薬のうちグリクラジドだけがLVMを有意に減少させる可能性が示された。心不全の初発や再発予防を必要とする2型糖尿病患者に対しては、グリクラジドの選択が適している可能性がある」と結論づけている。一方で、経口血糖降下薬によるLVMへの有効性については、RCT報告の蓄積を待って、今後さらなる解析を行う必要があるほか、LVMを減少させれば心不全の発症抑制につながるか否かも研究すべきだと付け加えている。

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