メンタル不調に市販薬での治療は是か非か――国内3千人の調査

 不眠や気分の落ち込みなどのメンタルヘルス不調時に、医療機関を受診せず、市販薬(OTC)を中心とするセルフメディケーションで対処することについて、国内ではその是非を問われることが多い。しかし、メンタルヘルス不調時のセルフメディケーションの実態がそもそも明らかになっておらず、実のある議論が進みにくいのが現状。そこで、千葉大学社会精神保健教育研究センターの椎名明大氏らは、このテーマに関する一般市民の意識調査を行い、その解析結果を「PLOS ONE」に1月25日報告した。

 この調査は2019年10月に、Webアンケートサービス「楽天インサイト」を用いて行われた。調査回答時点でメンタルヘルス上の問題を抱えている「患者群」、過去にそのような問題を抱えていたことがある「元患者群」、そのような経験のない「非患者群」が、それぞれ1,000人(合計3,000人)になった時点で回答受付けを終了した。なお、本人または血縁者にメンタルヘルスの専門家や製薬企業社員がいる人は除外した。

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 取り上げたメンタルヘルス症状は、不安、うつ、不眠、幻覚、その他の5項目。これらの症状の経験者数は、患者群では740人、780人、732人、84人、75人であり、元患者群では610人、764人、618人、39人、37人だった。OTCに対するイメージなどを評価してもらい、その回答を前記の3群で比較したところ、以下のような結果が得られた。

 まず、不眠症状の有無で二分すると、経験のある人(1,350人)は経験のない人(650人)に比べて、OTCの有効性を否定的に捉えていた。ただし、不眠症状に対して実際にOTCを用いたことのある人(216人)と、用いたことのない人(1,134人)の比較では、評価に有意差がなかった。また、OTCの安全性についての評価は、OTCを利用したことがある人の方が肯定的だった(いずれもP<0.001)。

 次に、メンタルヘルス症状に対するOTCのメリットについては、「不調時に柔軟に対応できる」という意見に対して、患者群の259人、元患者群の294人、非患者群の213人が同意し、元患者群は非患者群に比べて同意率が有意に高かった(P<0.001)。また、「OTCは安全である」に対しては患者群の169人、元患者群の145人、非患者群の117人が同意し、患者群は非患者群に比べて同意率が有意に高かった(P<0.01)。

 一方、デメリットについては、「診察を受けずに薬剤を正しく選択することが困難」という意見に対して、患者群の652人、元患者群の647人、非患者群の523人が同意し、患者群と元患者群は非患者群に比べて同意率が有意に高かった。また、「依存のリスクがある」に対しては患者群の540人、元患者群の529人、非患者群の413人が同意し、患者群と元患者群は非患者群に比べて同意率が有意に高かった。「危険である」に対しては患者群の449人、元患者群の390人、非患者群の350人が同意し、患者群は非患者群に比べて同意率が有意に高かった(いずれもP<0.001)。

 これらの結果から著者らは、「一般市民はメンタルヘルス不調の治療にOTCが向いていないと考える傾向があるが、OTCを使用したことのある人は、薬効を否定的に捉えていないようだ」との考察を述べている。また、不眠症に対してOTCを用いることにリスクを伴うとの回答が多いものの、やはりOTC使用経験のある人では、そのような捉え方は多くはなかったという。

 結論として、「メンタルヘルス関連セルフメディケーションのニーズは限定的と考えられる」とまとめている。その上で、国内では医師教育課程でOTCがほとんど取り上げられないこと、OTC以外にもオメガ3脂肪酸やビタミンDなどメンタルヘルスの維持・改善に有効な成分が存在することなどを指摘し、この領域のセルフメディケーションを推進する余地があることに言及。「適切なセルフメディケーションの普及のため、さらなる研究と教育が必要」と述べている。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2021年2月22日
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