受動喫煙でも糖尿病リスクが上昇――JPHC研究

喫煙が糖尿病発症リスクを上昇させることは知られている。しかし本人がタバコを吸わなくても身近に喫煙者がいると、受動喫煙のため糖尿病発症リスクが高くなることが分かった。国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの研究によるもので、詳細は「Journal of Diabetes Investigation」3月30日オンライン版に掲載された。
今回の研究は、1990年と1993年に全国9カ所の保健所管轄区域に住んでいた、タバコを吸わず糖尿病のない40~69歳の女性2万5,391人を対象に行われた。アンケート調査により、同居する配偶者の喫煙状況、および職場や公共スペースでの受動喫煙の頻度を把握し、糖尿病新規発症との関連を検討した。

郵便番号を入力すると、お近くの治験情報を全国から検索できます。
配偶者の喫煙状況は、過去にもタバコを吸ったことがない「非喫煙者」が6,569人(25.9%)、以前は吸っていた「過去喫煙者」が6,390人(25.2%)、現在も吸っている「現喫煙者」が1万2,432人(49.0%)だった。配偶者が過去喫煙者である女性は他群よりも高齢で無職の割合が高く、配偶者が現喫煙者である女性は余暇時間に身体活動をしていない割合が高かった。
追跡開始から最初の5年間で334人、次の5年間で374人が新たに糖尿病を発症した。配偶者が非喫煙者の女性に比較して、1日40本以上喫煙する配偶者を持つ女性は、年齢調整後の糖尿病発症オッズ比(OR)が1.40(95%信頼区間1.01~1.95)で、有意に高リスクであることが分かった。
調整因子として年齢のほかに追跡期間、BMI、高血圧、親の糖尿病歴、余暇時間の身体活動、コーヒー・アルコール摂取、居住地域を追加すると、この関連の強さはやや低下したが(OR1.34、95%信頼区間0.96~1.87)、配偶者の喫煙本数が多いほど糖尿病発症リスクが高くなるという有意な傾向が認められた(傾向性P=0.02)。
次に、職場や公共スペースでの受動喫煙の頻度と糖尿病発症リスクの関連を検討した。研究対象全体の解析では、毎日受動喫煙の機会があると回答した女性は、受動喫煙の機会がないと回答した女性に比べ、OR1.16(95%信頼区間0.96~1.40)だった。仕事を持っている女性に解析対象を絞ると、ORは1.23(同0.995~1.53)に上昇した。
研究グループでは、「わが国は男性の喫煙率が女性よりも高く、タバコを吸わない女性であっても家庭で配偶者から受動喫煙の影響を受けている場合のあることが考えられる。家族の健康を守るためにも、ヘビースモーカーの男性は、まず毎日吸うタバコの本数を減らし、その後の禁煙へつなげることが望まれる」と述べている。
なお、受動喫煙で糖尿病発症リスクが上昇するメカニズムについては、「はっきりしたことは分かっていないが、これまでの研究から能動喫煙によりインスリン抵抗性や血糖上昇が誘導されることが示されており、受動喫煙でも同じことが起きていると考えられる」としている。
糖尿病のセルフチェックに関する詳しい解説はこちら
糖尿病でいちばん恐ろしいのが、全身に現れる様々な合併症。深刻化を食い止め、合併症を発症しないためには、早期発見・早期治療がカギとなります。今回は糖尿病が疑われる症状から、その危険性を簡単にセルフチェックする方法をご紹介します。