食事の時間が不規則な人にはメンタル不調者が多い――国内労働者対象調査

食事を取るタイミングが不規則な人は、メンタルヘルス状態が良くないという関連性を示唆するデータが報告された。早稲田大学理工学術院の田原優氏らが、日本人労働者4,000人以上を対象に行ったWebアンケート調査の結果を解析したもので、詳細は「Nutrients」に8月13日掲載された。夜勤や睡眠障害などの影響を及ぼし得る因子を調整してもなお、食事を取る時刻の乱れが主観的メンタルヘルスの悪さと有意に関連していたという。
朝食の欠食や睡眠前の摂食が、肥満や糖尿病などの身体疾患のリスク因子であるとする研究報告は少なくない。ただし、食事を取るタイミングの不規則性に着目した研究は少なく、特にメンタルヘルスとの関連は明らかになっていない。今回発表された研究は、ライオン株式会社が調査を実施し、田原氏らが調査結果を解析したもので、日本各地から9,000人近くが回答。そのうち年齢(20~69歳)や有職者であることなどの適格条件を満たす4,490人分のデータが解析された。

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解析対象者は平均年齢47.4±0.1歳、男性が73.3%、BMIは22.69±0.05であり、15.5%は夜間労働者だった。アンケートは最大318問の質問項目で構成され、食習慣、身体活動習慣、性格特性、主観的健康感、主観的幸福感、メンタルヘルス状態、睡眠の質などを評価。このうち食習慣については、食事摂取時刻の頻繁な変動、噛む回数、食事に充てる時間、外食頻度などを1~7点のスコアで回答してもらった。また、メンタルヘルス状態の評価には、事業所に義務付けられているストレスチェック制度で用いられている手法を利用した。
「食事摂取時刻が不規則か?」との質問に対して、1~4点(全くそう思わない~どちらとも言えない)と回答した人を食事時刻が不規則でないとすると、3,410人(75.9%)が該当。一方、5~7点(ややそう思う~強くそう思う)と回答した食事時刻が不規則な人は1,080人(24.1%)だった。
食事時刻が不規則な人は、そうでない人に比較して年齢が若く(45.36対48.06歳)、夜間労働者の割合が高く(28.4対11.4%)、主観的幸福感が低い(SWLSという35点満点のスコアで16.35対17.52点)という有意差が見られた(いずれもP<0.001)。男女比やBMIは差がなかった。
また食事時刻が不規則な人は、神経症傾向と正の相関、誠実性とは負の相関があり、身体活動の頻度や主観的健康感が低く、睡眠障害のスコアは高く、メンタルヘルス状態が不良だった。相関係数を比較すると、主観的健康感の低さよりもメンタルヘルス状態が良くないことの方が、食事時刻の不規則性との相関が強かった。食習慣との関連では、食事時刻が不規則な人は、噛む回数や野菜摂取量が少なく、食事に充てる時間が短く、朝食の欠食や外食頻度が高く、食後から睡眠までの時間が短く、塩辛い物をよく食べるといった傾向が明らかになった。
次に、主観的な健康アウトカムを目的変数、食事時刻の不規則性を説明変数とし、年齢、性別、BMI、身体活動習慣、夜勤の有無、主観的幸福感、睡眠の質を交絡因子とするロジスティック回帰分析を施行。その結果、評価した大半の健康アウトカムが、食事時刻の不規則性と有意に関連していた。これにはサンプルサイズが大き過ぎることの影響が考えられたため、対象を無作為に抽出し1,405人に絞り込んで解析。
すると、主観的健康アウトカムのうち、身体面の健康(体重や血清脂質・血糖値・血圧などが心配か、体の痛みはあるか、病気になりやすいかなど)の大半は有意性が消失したのに対し、メンタルヘルス関連の健康(とても疲れている、だるい、緊張している、気になることがある、気分の落ち込み、食欲低下など)の大半は有意性が保たれていた。よって、食事時刻が不規則であることは、身体的な健康の悪化を介せず直接的にメンタルヘルスの悪化につながる可能性が考えられた。
これらの結果から著者らは、「食事のタイミングが不規則なことは、主観的なメンタルヘルスが不良であることの良いマーカーであることが示唆される」と結論付け、「職場での健康管理に、食事のタイミングを規則的にするという介入も必要ではないか」と提言している。

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