生理前のイライラ、あなたはPMS(月経前症候群)?症状と対策

PMS(月経前症候群)について

生理前にイライラすると感じたことがあるという人はいますでしょうか?そのイライラはPMSが原因かもしれません。本記事では、PMSの症状や原因について解説します。
  1. はじめに
  2. PMS(月経前症候群)とは
  3. PMS(月経前症候群)の症状
  4. PMS(月経前症候群)の原因
  5. PMS(月経前症候群)の悪化要因
  6. PMS(月経前症候群)の改善方法
  7. まとめ

はじめに

PMSというと馴染みがないという方もいるのでははいでしょうか。
PMSとは月経前に起こる女性特有の様々な不快症状のことを言います。PMSの症状や原因について知ることで、解決策も見えてきます。今回はそんなPMSについて取り上げます。

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PMS(月経前症候群)とは

PMS(月経前症候群)とはPremenstual Syndromeの略で、月経の10日~14日ほど前から起こる身体症状、精神症状を総称して言います。
月経が始まると症状が改善、消失するのが特徴です。

日本人の約9割に及ぶ女性が、この月経前の期間に何らかの不快を感じることがあると言われています。

PMS(月経前症候群)の症状

PMSの症状は200種類以上とも言われています。主な症状について身体症状と精神症状に分けて説明します。

1)身体症状
主な身体症状は、乳房の張りや痛み、下腹部の張り、頭痛・頭重感、腰痛、便秘、だるさ、むくみ、肌荒れ・ニキビ、眠気、体重増加などがあります。これらの身体症状の一部は、女性ホルモンのバランスが崩れ、体に水分を溜めやすくなったり、食欲が増進することで起こります。

2)精神症状
主な精神症状は、イライラ・怒りっぽくなる、憂うつ、涙もろくなる、情緒不安定、不安・落ち着かない、集中できないなどがあります。これらの精神症状は後述するセロトニン(幸せホルモン)という脳内物質の分泌が低下することによって起こるとされています。

PMS(月経前症候群)の原因

実はなぜPMSが起こるのか、はっきりした原因はまだ解明されていません。考えられる要因として以下のものがあります。

1)プロゲステロン(黄体ホルモン)の影響
女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロンの2種類あります(図2)。エストロゲンの主な働きは、①子宮内膜を厚くし、②女性らしい体を作り、③自律神経のバランスを整えます。

プロゲステロンの主な働きは、①子宮内膜の厚さを維持して、②妊娠中の状態を安定させ、③体内の水分を保持し、④食欲を増進させ、⑤基礎体温を上げます。
エストロゲンは月経中から排卵日頃までの低温相において、プロゲステロンより多く分泌されます。これに対して、プロゲステロンは排卵日頃から月経にかけての高温相において、エストロゲンより多く分泌されます。
PMSが出やすいのは、図2の高温相という時期です。プロゲステロンとエストロゲンのホルモンバランスが崩れることによって、脳内物質や水分代謝に影響を及ぼし、体調が不安定になると言われています。

2)セロトニンの低下
排卵後にエストロゲンの分泌が減ることで、幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンという脳内物質の分泌量が低下し、ネガティブな気持ちになると言われています。

3)ビタミン・ミネラルの欠乏
私たちの体は、ビタミンやミネラルなどの微量元素を使って様々な代謝を行なっています。偏った食生活や精神的ストレスなど、様々な原因によって体内の微量元素が不足すると、水分代謝などに影響を及ぼし、PMSの症状が出ると考えられています。

PMS(月経前症候群)の悪化要因

PMSの症状が出てしまう方でも、その月によって症状の出方に多少違いがあるという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。ここでは、どのような要因がPMSを悪化させてしまうのかを説明します。

1)精神的ストレス
仕事や人間関係のストレスによって緊張状態が続くと、PMSの症状は重くなる傾向にあります。

2)嗜好品
タバコ、過度のアルコール、カフェイン、甘い食べ物といった嗜好品を多くとる方はPMSの症状が重くなる傾向にあります。

3)性格
几帳面、神経質、完璧主義、負けず嫌い、クヨクヨ悩んでしまうといった性格があるとPMSが出やすい傾向にあります。
以上のような悪化要因に共通しているのは、自律神経やホルモンバランスに負担をかけてしまうということです。

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PMS(月経前症候群)の改善方法

PMSの症状を軽減させるには、前述した悪化要因を取り除くことが必要です。
ポイントは、健康的なライフスタイルを送ることで自律神経やホルモンバランスを整えることです。

①食事
・血糖値を上げにくい食べ方
後述しますが血糖値の乱高下はPMSを招き、悪化させるため、血糖値の変動をなるべく穏やかにする食べ方が大切です。具体的には、1日5食などの小分けにして食べるようにしましょう。その際の間食に適した食品としては、ヨーグルト、ナッツ、牛乳、海藻、小魚などがあります。

・6つの栄養素
PMSの症状を改善する6つの栄養素があります。それはカルシウム、マグネシウム、ビタミンB6、ビタミンD、鉄、食物繊維です。
カルシウムは様々なホルモンバランスに影響を与えており、ビタミンDと合わせて摂ることで吸収が促進されます。マグネシウムやビタミンB6を摂ることによって、肌荒れ、イライラ、不安、うつの改善が期待できます。鉄分が不足して貧血になるとPMSの症状が重くなります。食物繊維は血糖値の上昇や減少を穏やかにするため、血糖値を安定させるのに最適です。
これらの栄養素を摂るために、普段の食生活に小魚、さんま、カツオ、牛乳、卵、野菜、みそ、豆類、ナッツ類、イモ類、ごぼう、おからなどを摂るように心がけましょう。

②運動
運動習慣のある人よりもない人の方が、PMSが出やすくなるというデータがあります。運動といっても、散歩やストレッチ、ヨガなど軽い運動で十分です。それにはいくつか理由があります。

・血行改善・リラックス効果
運動によって筋肉の緊張がほぐれ、血行が改善して体は温まります。そうするとリラックス効果が得られます。腸の蠕動(ぜんどう)運動が活発になるため、便秘の予防・改善もできます。

・血糖値の安定効果
血糖値の乱高下は体に負担となるばかりでなく、低血糖状態になるとイライラ、不安、落ち着かないなどのPMSの精神症状が出ます。運動することでインスリン(血糖値を下げるホルモン)の働きを改善し、血糖値を安定させることができます。

・セロトニン増加
ストレッチやウォーキングなどの規則的な動きをする運動によってセロトニンの分泌が促進されます。セロトニンの増加によって、PMSの改善が期待できます。

③睡眠
PMSによる不眠はプロゲステロンの増加とエストロゲンの減少によって起こるとされています。これには、プロゲステロンの増加によって体温が上がり、体が覚醒モードになってしまうことと、エストロゲンの減少によって、セロトニンが減り、メラトニンという睡眠ホルモンも減ってしまうことが関係します。したがって、セロトニンを増やすために後述するリズム運動や日光を浴びるなどの対策をとりましょう。また、体が覚醒モードになっているPMSの時期には、寝る前のスマホやテレビ、カフェイン摂取、寝酒などは避けましょう。

④嗜好品
・タバコ
タバコを吸うことで血行が悪くなるため、体が冷えPMSが出やすくなりますので、できれば禁煙しましょう。

・アルコール
適量のアルコールは血行を促進しリラックス効果も得られます。しかし、過度のアルコールや寝酒は睡眠の質を低下させるため、量とタイミングに注意する必要があります。

・甘いもの
甘いものにはたくさんの砂糖が含まれており、過剰摂取は血糖値の乱高下につながり、PMSを悪化させます。甘いものを間食で摂る場合は1日200キロカロリーを目安にしましょう。

・カフェイン
コーヒーや紅茶などに含まれるカフェインは脳を興奮させる作用があるため、寝る前の摂取は避け、日中に適量摂るようにしましょう。

⑤温める
子宮や足、その他体の血行不良はPMSを悪化させるため、体を温めることが大切です。具体的には、くるぶしから3cm以上(三陰交という女性の不調に聴くツボがあります)の長さのある厚手の靴下を履きましょう。子宮の冷えを改善するためには、腹部や腰部にカイロを貼るのも効果的です。また、全身を温めるのにしっかり湯船につかりましょう。

⑥薬物・サプリメント
近所の婦人科を受診しましょう。
・サプリメント(プラセンタ)
プラセンタとは胎盤のことです。市販されているプラセンタのサプリメントは馬、羊、豚由来の胎盤であり、ホルモンバランスや自律神経を整える効果があります。また、PMSを軽減してくれるだけでなく、月経中の痛みや経血量を減らす効果もあります。
毎日100㎎摂取することを目標にしましょう。

・サプリメント(ガンマ-リノレン酸)
ガンマ-リノレン酸とは不飽和脂肪酸の1つです。PMSの重い人は、血中のガンマ-リノレン酸の濃度が低いことが分かっています。油分の多いもの、甘いものやコレステロールの多いもの、アルコールの摂りすぎなどによって、ガンマ-リノレン酸の血中濃度は低下します。
食品でガンマ-リノレン酸を多く含むものはないため、サプリメントで補いましょう。

・サプリメント(テアニン)
テアニンとはお茶に含まれている成分です。1日1gのテアニンを摂取するとPMSが軽減したというデータがあります。特にPMSの精神症状に対して効果的です。

・チェストツリー
チェストツリーとはホルモンバランスを整える作用のあるハーブです。プロゲステロンの分泌不足に伴う諸症状を緩和することが分かっています。効果が出るまでに3ヶ月程度かかることもあるため、継続して摂取することが大切です。

・低用量ピル
低用量ピルには月経痛の軽減、経血量の軽減などの作用があります。さらに、月経前のホルモンバランスの変化が少なくなるため、PMSの症状も軽減します。医療機関(婦人科など)でのみ入手可能で、処方前に医師の診察を受ける必要があります。また、低用量ピルにもいくつか種類があるため、副作用の少ない自分に合った種類のものを服用しましょう。

・漢方薬
漢方医学では、人の体は気(き)・血(けつ)・水(すい)という3つの要素で構成されており、互いに影響し合って心身のバランスをとっていると考えられています。PMSはこの3つすべてのバランスが悪い状態です。具体的には、気の異常によって抑うつ症状、情緒不安定、イライラなどが起こります。血の異常によって頭痛、肩こり、腹痛などが起こります。また水の異常によって吐き気、めまい、むくみが起こります。漢方薬のメリットは基本的には副作用がないこと、1つの薬を飲
むことで複数の症状に対して効果があることです。そのためPMS改善には適しています。医療機関で処方されるものの他、ドラックストアなどでも購入可能なものがあります。

⑦セロトニン対策
セロトニンの分泌不足がPMSに関わっていることは説明しました。そこで、セロトニンの分泌を活発にするための方法をいくつか紹介します。まず、日光(できれば朝日)を30分程度浴びることです。これはセロトニンの生成には日光が必要なためです。また、散歩やストレッチ、自転車、深呼吸などの規則的な動作が連続するリズム運動もセロトニンの分泌を促します。自分の体力や好みにあったリズム運動を継続しましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
PMS(月経前症候群)の症状や原因について知ることで、どうしたら改善されるか分かりましたでしょうか?PMS(月経前症候群)の事を理解して、自分の健康状態を確かめると良いかもしれません。

また、PMS(月経前症候群)がひどい場合は、早めに近くの医療機関を受診しましょう。

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