CKD患者の貧血有病率とESA製剤使用状況――J-CKDデータベースの解析

国内の慢性腎臓病(CKD)患者のデータベース「J-CKD-DB」のデータ解析の結果から、CKD患者のヘモグロビンレベルやESA製剤の使用状況の詳細が明らかになった。香川大学医学部循環器・腎臓・脳卒中内科の祖父江理氏、川崎医科大学腎臓高血圧内科の柏原直樹氏らによる論文が、「PLOS ONE」に7月20日掲載された。
J-CKD-DBは、厚生労働省の臨床効果データベース整備事業、臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究事業の一環として、日本腎臓学会と日本医療情報学会が共同で構築しているデータベース。国内の主に大学病院受診患者のデータが登録されている。現時点で15大学病院から総計14万8,000人の患者データが収集されており、本邦のCKDの実情、診療実態の可視化が期待されている。今回の研究ではこのデータを基に、日本人CKD患者の貧血有病率と赤血球造血刺激因子(ESA)製剤の使用状況が調査された。

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7大学病院の外来CKD患者のうち、eGFRが5~60mL/分/1.73m2の成人3万1,082人のデータが解析に用いられた。急性腎障害(AKI)を除外するため対象を外来患者のみとし、また透析導入または腎移植後の患者を除外するためにeGFR5mL/分/1.73m2未満の記録がある患者は対象に含めなかった。
主な患者背景は、年齢中央値72歳、男性54.5%、eGFR中央値50.0mL/分/1.73m2、平均ヘモグロビン13.02±1.88g/dLで、CKDステージはG3aが65.7%、G3bが23.5%、G4が7.6%、G5が3.1%だった。性別のヘモグロビン値は男性13.6±1.9g/dL、女性12.4±1.6g/dLで、男性の方が有意に高かった。
全体をeGFR5mL/分/1.73m2ごとに11のグループに層別化した検討の結果、eGFRが低下するに従いヘモグロビンレベルが低下していることが明らかになった。また、全てのeGFRカテゴリーで女性は男性よりヘモグロビンレベルが低く、eGFR15mL/分/1.73m2未満の群を除いて有意差が認められた。
貧血有病率については、日本透析医学会やKDOQIなどによる、4種類の貧血の定義に基づいて検討。いずれの定義で検討しても、CKDステージが進むほど貧血有病率が上昇した。そのうち日本透析医学会による腎性貧血の定義による有病率については、CKDステージG3aで7.8%、G3bで18.1%、G4で40.1%、G5では60.3%であった。年齢、CKDステージ、アルブミン、CRPで調整しG3aを基準に貧血のリスクを検討すると、G3bはオッズ比(OR)2.32(95%信頼区間2.09~2.58)、G4はOR5.50(4.80~6.31)、G5はOR9.75(8.13~11.7)となった。
ロジスティック回帰分析の結果、CKD進行以外の貧血リスク因子として、65歳以上、女性、アルブミン3.5g/dL以下、CRP0.3mg/dL以上、Na-Cl30mEq/L以下が浮かび上がった。これにより、栄養不良や炎症、代謝性アシドーシスなども、貧血のリスク因子であることが示唆された。
ESA製剤を使用している割合は、CKDステージG3aは0.0%、G3bは0.7%、G4は7.9%、G5は22.4%だった。年齢階層別に見ると、75歳以上で特にESA使用率が低かった。
ヘモグロビンがガイドラインの示す管理目標内(ESAを用いていない場合は11.0g/dL以上、ESAを用いている場合は11.0g/dL以上13.0g/dL未満)にある患者の割合は、CKDステージG3aで81.2%、G3bで71.6%、G4で54.6%、G5で44.8%だった。
また、CKDステージG4の患者のうちESAが使われている患者のヘモグロビンは10.1g/dLで、ESAが使われていない患者(11.7g/dL)より有意に低かった。同様に、ステージG5の患者のうちESAが使われている患者のヘモグロビンは10.1g/dLであり、ESAが使われていない患者(11.1g/dL)より有意に低かった。これらより、国内のCKD患者に対するESA使用率は比較的低く、ヘモグロビンがガイドラインの管理目標を満たしていないケースも少なくないことが分かった。

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