「予防医療でのホルモン補充療法は無益」、米で勧告

米国の予防医療に大きな影響力を持つ米国予防医療作業部会(USPSTF)は12月12日、「閉経後女性は心疾患や骨粗鬆症といった慢性疾患を予防する目的でホルモン補充療法(HRT)を受けるべきではない」とする勧告を発表した。

2012年に出された前回の勧告から変更はなく、2017年5月に発表された草案とも一致した内容だとしている。
勧告の全文は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」12月12日号に掲載された。

女性は更年期を境に女性ホルモンの分泌が減少するが、それを補充する治療がHRTだ。
HRTではエストロゲンのみによる治療とエストロゲンとプロゲステロンの併用治療のいずれかが行われる場合が多い。
また、錠剤だけでなくパッチ(貼り薬)もある。

HRTはホットフラッシュなどの更年期障害の治療で実施されるが、高齢になるほど発症リスクが高まる心疾患や骨粗鬆症、骨折などを予防する効果がある可能性も示唆されていた。
しかし、USPSTFは2012年の勧告に引き続き今回も、閉経後女性がこれらの慢性疾患を予防する目的でHRTを受けるべきでないとの見解をあらためて示した。

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今回の勧告をまとめた作業部会の委員長である米カイザー・パーマネンテ・ワシントン衛生研究所(KPWHRI)のDavid Grossman氏は「閉経後女性に対する慢性疾患の予防を目的としたHRTに利益が全くないわけではない。
しかし、それを上回る害があるため、全般的に見るとHRTの利益はないとの結論に至った」と説明している。

ただし、この勧告は更年期女性がホットフラッシュや腟乾燥感などの更年期症状を緩和する目的で短期的なHRTを受けることを否定するものではないとしている。

USPSTFの作業部会は今回、4万人を超える女性を対象とした18件の臨床試験のデータをレビューした。
その結果、エストロゲンとプロゲステロンの併用によるHRTは乳がんおよび心疾患のリスクを上昇させ、またエストロゲンのみによるHRTは脳卒中や血栓、胆嚢がんのリスクを上昇させることが示されたという。
作業部会は「こうしたリスクはHRTによる骨粗鬆症や糖尿病のリスク低減効果を上回る」と結論づけた。

今回の勧告を策定した作業部会には関与していない米マウントサイナイ・ アイカーン医科大学産婦人科学・生殖医学のSuzanne Fenske氏は、「他の治療法ではコントロールできない症状に苦しむ更年期女性にはHRTを行うメリットはある」とした上で、「HRTは予防目的ではなく、更年期障害の管理のために実施すべきだ」と強調する。

同氏によると、米国で初めてHRTが登場した1960年代には、HRTは「永遠に女性らしさを保つことができる治療法」としてもてはやされたという。
1980年代には骨粗鬆症の予防効果をはじめ、さまざまなHRTのベネフィットが報告され、注目された。
しかし、2000年代に報告された女性健康イニシアチブ(Women’s Health Initiative;WHI)の一連の研究結果は、HRTの位置付けを揺るがすことになった。同試験では、HRTが乳がんや心疾患、脳卒中のリスク上昇に関連することが示されたからだ。

作業部会委員長のGrossman氏によると、今回のレビューでは前回の勧告以降に発表されたWHIの長期追跡データも考慮された。
しかし、その内容は作業部会の結論に変更を迫るものではなかったという。

しかし、米メイヨー・クリニックのStephanie Faubion氏は、今回の勧告が多くの女性の不安を煽ることになるのではないかと懸念を示す。
例えば、45歳以下で閉経を迎えた早期閉経女性は勧告の対象外とされているが、こうした女性がHRTによるリスクへの恐れからこの治療を受けないと健康状態が悪化する可能性があることを同氏は指摘している。また、同氏は全年齢層の女性に対して同一の勧告が示されていることに言及し、「60~70歳代の女性と比べて50歳代の女性の方がHRTによって得られる利益は大きい」との考えを示している。

Fenske氏も「ホットフラッシュなどの更年期障害に苦しんでいる女性は、HRTによって安全にその症状を軽減することができる。HRTについては誤った情報や誤解を招く情報が多いため、HRTによる更年期障害の治療に興味がある女性はまず医師に相談すべきだ」と強調している。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2017年12月12日
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