「PSA検診で死亡リスク低下」新たな解析結果

前立腺特異抗原(PSA)の血液検査による前立腺がん検診の必要性については賛否両論があり、議論が続いている。こうした中、その議論の発端となった2件の大規模研究のデータを新たに解析した結果が「AnnalsofInternalMedicine」9月5日オンライン版に掲載された。

それによると、PSA検診によって前立腺がんによる死亡リスクを25~32%低減できることが示されたという。
米国では50歳以上の男性に対し、PSA検診を年に1回受けることが2008年ごろまで推奨されていた。
しかし当時、PSA検診が実際に死亡リスクを低下させることを示した臨床研究はなかった。

そこで実施されたのが欧州のERSPC研究と米国のPLCO研究だ。いずれの研究も、PSA検診に死亡リスクを低下させる効果があるのか否かを明らかにすることを目的としていたが、2009年に発表されたこれらの研究の結果は混乱をもたらすことになった。
というのも、ERSPC研究ではPSA検診によって死亡リスクが20%低下したとする結果が得られたのに対し、PLCO研究ではPSA検診にベネフィットはないとする、相反する結果が得られたからだ。

これを受け、米国予防医療作業部会(USPSTF)は2012年、「PSA検診を実施すべきでない」とする勧告を発表し、議論を呼んだ。

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一方、米国がん協会(ACS)などは医師に対し、これらの研究結果について患者に情報を提供し、PSA検診を受けるかどうかについては個別に判断すべきとの推奨を示した。
ただ、ERSPC研究とPLCO研究では遵守率や環境が異なっていたことが指摘されていた。
特に、PLCO研究では、PSA検診を定期的に受ける介入群に割り付けられていたにもかかわらず、実際には検診を受けなかった男性がいた一方で、通常ケアを受けるとされていた対照群にPSA検診を受けた男性がかなりの割合で含まれていたことが問題視されていた。

そこで、米フレッド・ハッチンソンがん研究センターのRuthEtzioni氏らは今回、これら2件の研究データを用い、数学的モデルを用いてPSA検診を「受ける群」と「全く受けない群」を同条件で比較検討した。

その結果、これら2件の研究結果はかなり近いものとなり、PSA検診によりERSPC研究では25~31%、PLCO研究では27~32%の死亡リスク低下が認められたという。
この結果を踏まえ、Etzioni氏は「PLCO研究では、介入群と対照群の両群でPSA検診が効果を発揮したため、両群の間に差が認められなかったと考えられる」と説明。

ただし、「定期的なPSA検診の導入によって治療を必要としないがんに対する過剰な治療が行われる可能性も高い」として、PSA検診を受けるかどうかは医師と相談して決めるべきだと助言している。

なお、前立腺がんの手術は性機能障害や失禁の原因となる場合があり、男性のQOL(生活の質)を著しく低下させる可能性がある。

また、前立腺がんの多くは進行が遅く、ほとんどの患者が心疾患など前立腺がん以外の疾患が原因で死亡していることも、早期発見を目的としたPSA検診の意義をめぐる議論の背景にある。

今回の解析結果について、ACSチーフ・メディカル・オフィサーのOtisBrawley氏は「大きな混乱が生じていた領域に明確さをもたらした」と評価。
「今なら検査のリスクとベネフィットについて、7年前よりも自信をもって患者に説明できる」と話している。

今年4月、USPSTFはPSA検診に関する新たな勧告の草案を公表し、「70歳以上の男性には推奨しないが、55~69歳の男性では医師と相談の上で検診を受けるかどうか判断すべき」とするACSのガイドラインに類似した推奨案を示した。

今回のEtzioni氏らの報告を受け、USPSTFはPSA検診に反対していたこれまでの姿勢をさらに軟化させる可能性がある。

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参考情報:リンク先
HealthDay News 2017年9月5日
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